周易64卦384爻占断
274、地風升(ちふうしょう)4爻
◇ 升とは何か?
地風升(ちふうしょう)は、地中の木(巽=木)が、土(坤)を押し分けて伸び上がる象から、物事が順序と誠をもって段階的に上昇していく時を示す卦です。升の上昇は、力で奪う昇進ではなく、信を得て用いられ、順に従って位置を得る上昇です。四爻は外卦坤の下に在り、陰をもって陰位に正しく、昇進の勢いが強まる局面であっても、君を凌ぐような嫌いがなく、むしろ“順に仕える徳”によって信任を保ちます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
升が示すのは、
- 上がるべき時である
- しかし上がるほど「疑い」も生じやすい
- だからこそ、信と順という徳が要となる
- 実利や欲に傾けば、上を侵す疑いを招く
という筋道です。四爻は、上へ上へと伸びる気運の中で、出過ぎず、順に従って事を成すことで、吉に至る道を明らかにします。
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◆ 4爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「王(おう)もって岐山(きざん)に亨(きょう)す。吉(きち)。咎(とが)なし。」
【象伝】
「王(おう)もって岐山(きざん)に亨(きょう)するは、順事(じゅんじ)なり。」
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● 解釈
二爻は用いられて禴(やく)を司り、四爻はさらに一段進んで、岐山を祭祀させます。いずれも信任されてある地位に升っているわけですが、ここで更に升れば、君を侵す疑いが生じかねない。卦中この二つの爻だけに「升」の字が無いのは、まさにその危うさを避け、昇進そのものを強調せず、王命に従う“仕え方”を示すためと見るのが要点です。
ではなぜ四爻に岐山を祭祀させるのか。四爻は外卦坤の下に在って、順の順なるものです。しかも陰をもって陰位に正しく、升の時に当たりながら、勢いに乗って昇進を専らにして柔中の君を凌ぐような嫌いがありません。だからこそ、疑いを招かず、王の信任を受け、祭祀という大事を任されるのです。二爻は誠実を喜び用い、四爻は順徳を尚び用いる――この違いは、上に升って仕える者にとって、また政を行う上に欠くことのできない要素であり、ゆえに「吉。咎なし」と断じられます。
ここでいう岐山は、隨(ずい)の上爻に見える西山と同類の象であり、「亨」とは祭祀を表す語であることは、古来一貫した読みです。象伝が「順事なり」と言い切るのは、ただ“祭をした”という意味ではなく、順にして事(つか)える――すなわち、己を立てて功名を求めるのではなく、上の意に順い、正しい手順で職分を果たす、その姿勢自体が吉を生む、と闡明しているのです。
この爻を得た時の占断は、二爻の趣旨とほとんど同じと見てよいところがあります。眼目は二つで、精神的なるものに力を置いて物質欲の追求を意図するなということ、そして既に或る程度の功を収めているので深追いしてはいけないということです。違いを言えば、二爻は努めて信を博すべきであるのに対し、四爻は、信任を得ているがゆえに、かえって出過ぎることを戒める点に重きがあります。
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◆ 含まれる教え
この爻が教える要点は次の通りです。
- 信任を得た時ほど、出過ぎを戒めよ
- 昇進や成果を誇らず、順に仕えることで疑いを避ける
- 物質欲に傾けば「上を侵す疑い」を招く
- すでに得た功を守り、深追いしない
- 大事は、正しい手順と節度が吉を呼ぶ
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◆ 仕事
仕事では、信任を得て任を授かりやすい時です。表に立って功を誇るより、上意をよく汲み、手順を整え、周囲の働きを活かして事を進めるほど評価が固まります。すでに一定の成果があるなら、拡大や欲張りに走らず、現状を締め、基盤を固めるのが吉です。出過ぎれば、実力以上に前へ出たと見られて疑いを招きます。
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◆ 恋愛
恋愛や縁の面では、話がまとまりやすく、良縁の象があります。特にこの爻が恒へ変ずることから、結ばれれば長く保ちやすい。けれども、ここでも「出過ぎ」が凶の芽になります。相手を動かそうと焦って押し込むのではなく、自然な流れと手順を尊び、信頼の積み上げで進めるほど安定します。
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◆ 地風升(4爻)が教えてくれる生き方
四爻が伝える人生の要諦はこうです。
「得た位置で、従順に仕えよ。出過ぎず、深追いせず、吉を長く保て。」
- 信任を得た時ほど、控えめに徳を積む
- 欲で上を侵さず、役割を尽くして功を固める
- すでに得たものを守り、さらに求めすぎない
- 順序と節度こそ、上昇を“恒”へ変える鍵
岐山に亨するとは、ただ祭をすることではなく、順に事えて疑いを招かず、吉を咎なく保つ道を示しているのです。

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