周易64卦384爻占断
261、天風姤(てんぷうこう)3爻
◇ 姤とは何か?
天風姤(てんぷうこう)は、「不意に出会う」「思いがけず入り込むものに遭う」働きを示す卦です。
上卦は乾(天)、下卦は巽(風)で、剛健な天の下に、風のように忍び入り、まとわりつく陰の気が現れる象を持ちます。
姤は、吉凶が単純に決まる卦ではありません。
問題は「入り込んできたものが小さいうちにどう扱うか」で、初動を誤ると、のちに勢いを増して手に負えなくなりやすいところに特徴があります。
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◆ 卦全体が教えてくれること
この卦は、初爻にただ一つの陰が現れ、二爻から上爻までの五陽がそれを対照して展開します。
したがって各爻は、いずれも「初爻の一陰(媚び入り、惹きつけるもの)をどう扱うか」を、それぞれの位置と陰陽関係から語っていると見ます。
三爻は、内卦乾の中にあって勢いは強いはずなのに、初爻に対して比でも応でもなく、直接の手づるがありません。欲は動くが道が立たず、進退が落ち着かぬ――その「近づけぬこと」自体が、かえって身を守る働きになる、というのが三爻の眼目です。
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◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「臀(しり)に膚(はだえ)无し、其の行くこと次且(じしょ)たり。厲(あやう)けれども大いなる咎(とが)无し」
【象伝】
「其行くこと次且(じしょ)たるは、行きて未だ牽(ひ)かれざるなり。」
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● 解釈
この三爻は、賓卦の夬(たくてんかい)から見れば四爻に当たり、辞もまた夬の四爻に似た形で繋げられています。すなわち「臀に膚なし、行くこと次且たり」とは、尻に肉がなく据わっていられず、歩こうにも歩けぬ、進退の苦しさを譬えた言葉です。
夬の四爻では、陰位の陽爻で気力に欠けるために「次且たり」とされましたが、姤の三爻は陽位の陽爻で位は正しい。それにもかかわらず、求むる初爻とは比爻でも応爻でもなく、二爻が比として初爻を包み隠してしまっているため、手づるがありません。噂に聞く“うまい魚”に心は引かれるが、近づく筋道がなく、押しかける道も立たず、立ったり座ったりして落ち着かぬ――これが「次且たり」の実相です。
しかし姤において、心牽かれる初爻は、娶るべき相手ではありません。もしこれを得れば、惑溺・淫逸に沈み、身を損なう方向へ傾きやすい。ゆえに、手づるがなく近づけないことが、かえって身の幸いとなる面があるのです。だから爻辞は「厲けれども大いなる咎なし」と言い、象伝も「行きて未だ牽かれざるなり」と、まだ引きずり込まれていないことが咎を大きくしない理由だと明らかにします。
三爻の危うさは、「勢い(乾の剛健)」があるために、理屈では危険だと分かっていても、心が動きやすい点にあります。けれども今は、道が立たず、縁が繋がらず、結果として牽かれずに済む。危うい欲念の揺れはあるが、深入りする現実の線が切れている分、大過に至りにくい――これが三爻の占意です。
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◆ 含まれる教え
- 心が強く引かれても、手づるが無い時は「無理に繋ぐな」が正着となる
- 道が立たぬことは不運ではなく、危険から守られている面がある
- 進退の落ち着かなさ(次且)は、欲を断ち切るための形として現れる
- 危うさは「対象」よりも、こちらの心の動きにあると自覚せよ
- 牽かれる前に止まれば、大きな咎にはならない
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◆ 仕事
仕事では、気持ちは前に出るのに、資金・人手・相手の都合などが整わず、計画が進みにくい時です。
あるいは「やりたい案件」「欲しい取引先」があっても、筋道が立たず、話が繋がらない。ここで強引に押し通すと、姤の“引き込み”に入って、後で不利益を背負いかねません。
したがってこの爻は、躊躇なく断念すべきものは断念し、進まぬ事情を「守り」と見て引く判断が吉となります。談判・交渉は進行しにくく、途中で枝分かれして混乱しやすいので、無理にまとめに行かず、止める・畳む・保留にする、といった守りの処置が適います。訴訟などは断じて不可と見ます。
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◆ 恋愛
恋愛・婚姻は、思い止まった方がよい時です。
惹かれても、それは「娶るべき相手ではない」性質が強く、強く求めれば惑溺に入りやすい。今、手づるがなく進めぬ事情があるなら、それを“天の止め”として受け取り、争いの芽が立つ前に距離を置くのが安全です。
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◆ 天風姤(三爻)が教えてくれる生き方
三爻が教えるのは、「進めない時は、進めないこと自体が救いになる」という生き方です。
心は動き、欲は立つ。けれども道が立たない。
その不自由さは、牽かれて深みに入るのを防ぐための形でもあります。
危うさを自覚し、無理に縁を繋がず、牽かれる前に止まる。
そうすれば、厲さはあっても、大いなる咎には至らない。
これが、姤の三爻が示す身の守り方です。

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