周易64卦384爻占断
259、天風姤(てんぷうこう)初爻
◇ 姤とは何か?
天風姤(てんぷうこう)は、「不意に出会う」「思いがけず入り込むものに遭う」働きを示す卦です。
上卦は乾(天)、下卦は巽(風)で、剛健な天の下に、風のように忍び入り、まとわりつく陰の気が現れる象を持ちます。
姤は、吉凶が単純に決まる卦ではありません。
問題は「入り込んできたものが小さいうちにどう扱うか」で、初動を誤ると、のちに勢いを増して手に負えなくなりやすいところに特徴があります。
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◆ 卦全体が教えてくれること
この卦は、夬(たくてんかい)で決去された一陰が、形を変えて戻り、下に位を得たものとして眺めることができます。
ゆえに姤は、「いったん決し去ったはずのものが、別の顔で再び入り込む」ような局面を含みます。
そして初爻は、成卦の主であり、二爻から上爻までの五陽は皆この初爻(主)を対照して展開していきます。
したがって姤を読む上で、初爻を十分に押さえることが要点となります。
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◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「金柅(きんじ)に繋(つな)ぐ、貞吉。往(ゆ)く攸(ところ)有れば、凶を見る。羸豕(るいし)孚(まこと)するも蹢躅(てきしょく)す。」
【象伝】
「金柅(きんじ)に繋(つな)ぐは、柔道牽けばなり。」
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● 解釈
「金柅に繋ぐ、貞吉」は、今はまだ一陰で力が弱く見えても、進ませぬように“強く確実に”留めよ、という戒めです。柅は車止めの棒と見る説があり、弱い棒では折れて役に立たぬゆえ、金(=金属)の堅い柅で確実に止めよという意になります。
一方で、柅を絲車(いとぐるま)の枠と見る説もあり、二爻から上の陽爻が金のように丈夫な枠となり、初爻の陰の糸をそこへ繋いで、ほどけて絡みつかぬようにする、という読み方も成り立ちます。象伝が「柔道牽けばなり」と言うのは、陰(柔)が媚態・蠱惑・奸策のような形で人を操ろうとし、動きまとわりつく性質を持つためで、だからこそ“繋いで動かぬようにする”のが正しい、ということです。
「往く攸有れば、凶を見る」は、進む先があっても(動かす口実があっても)動けば凶を招く、という断です。事柄としては一時進捗するように見えても、のちに失敗し、身を傷つけやすい。ここで大切なのは、“進むことそのもの”が禁物だという点です。
そして「羸豕孚するも蹢躅す」は、弱い痩せ豚であっても、心をかけて従順にさせようとしても、跳ねたり踏み迷ったりして、じっとしていない――つまり、今は小さく見えても、扱いにくく、放置すれば後に強くなるから、早く確実に止めよ、という証明です。夬で断った一陰が、ここで再び芽を出し、坤為地の「霜を履みて堅氷至る」のように、いずれ堅く大きくなる道筋を含むため、初手で止めるほどよいのです。
この爻を得た時は、心が動き、引かれる力が強く働く時ですが、だからこそ無事を念として旧事を守るのが本道です。とりわけ「女性に心を引かれて大事を失う」類の象意も含み、誤った目的へ進んで損失を招きやすいので、警戒してなお踏み出さぬ決断が要ります。
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◆ 含まれる教え
- 小さいうちに止めるほど、後の禍を断てる
- “進む理由”があっても、動けば凶を見る局面がある
- 柔(陰)はよく動き、まとわりつく——ゆえに繋いで動かさぬのが正しい
- 弱く見えるものほど、かえって手に負えぬことがある
- 無事第一の時は、旧事を守り、手出し口出しを断て
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◆ 仕事
仕事では、時の勢いに叶わぬ案・正しくない方向に心が引かれやすい時です。
新規着手・拡張・強引な方針転換は凶を見やすく、停頓の象が強い。
この爻は「進めば凶を見る」と明言するため、ここでは攻めずに守るのが要です。
手出し口出しを控え、いまある業務・役割・仕組みを守り、余計な火種を作らない。
交渉もこちらから押さず、丸く納め、禍根を残さぬことが最善になります。
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◆ 恋愛
縁談はよろしくなく、見合すべし、の象意が濃いところです。
魅力的に見える出会いでも、のちにまとわりつき、足を取られやすい。
一時の情や勢いで進むほど、後悔が大きくなりがちです。
また「牽かれる力が強い」時ほど、冷静な歯止めが必要です。
関係を進めるより、距離を置き、手綱を締める判断が合います。
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◆ 天風姤(初爻)が教えてくれる生き方
初爻が教えるのは、「禍は小さいうちに繋げ」という生き方です。
今は一陰で弱そうでも、弱いなりに跳ね回り、放てば強くなる。だから金柅で確実に止める。
心が動く時ほど、動かない。
進めば凶を見る局面では、勇気は“前進”ではなく“停止”に宿ります。
旧きを守り、三猿(見ない・聞かない・言わない)の姿勢で、糸を解き放って陰を放置しないこと――それが姤の初めを正しく越える道です。


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