255、沢天夬(たくてんかい)3爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

255、沢天夬(たくてんかい)3爻

◇ 夬とは何か?

沢天夬(たくてんかい)は、「決する」「断ち切る」という働きを示す卦です。

上卦は兌(沢)、下卦は乾(天)で、乾の剛健な勢いが上へ押し上がり、兌の口(言)を通じて不正や停滞を断固として排し、局面を切り替える象を持ちます。

夬は、ただ強く出ればよい卦ではありません。

決断には「時機」と「方法」があり、勢いだけで押せば、相手に先を読まれたり、周囲に疑われたりして、かえって破れる危険が出ます。

夬の要点は、決すべきを決しつつ、軽挙妄動と露骨さを避け、筋と手順で通すことにあります。

◆ 卦全体が教えてくれること

夬の卦は、一つの陰(上爻)を五つの陽(初〜五爻)が決し去ろうとする形です。

つまり、問題点・障害・不正が「あと一箇所」に集約し、それを排して流れを通す局面に当たります。

ただし、決する側が先走り、怒気や剛情が表に出ると、相手に察知され、逆襲や妨害、あるいは内部の不和(疑惑)を招きやすい。

よって夬は、勇猛よりも「密」「節」「中道」を重んじ、勝てる時機が熟するまで手綱を握ることを求めます。

◆ 三爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「頄(きゅう)に壮なり。凶(きょう)有(あ)り。君子(くんし)夬夬(かいかい)。独(ひと)り行(ゆ)けば雨(あめ)に遇(あ)う。濡(うるお)うが若(ごと)く慍(いか)る有(あ)り。咎(とが)なし。」

【象伝】

「君子(くんし)夬夬(かいかい)は終(つい)に咎(とが)なきなり。」

● 解釈

三爻は、夬の「決する勢い」が最も表に出やすい危地にあります。

「頄(きゅう)に壮なり」とは、決意や血気が顔の骨(つらぼね)にまで現れ、外からも読み取れるほど露わになることです。夬の局面でこれが起これば、「凶有り」となるのは自然で、相手に企てが察せられ、先手を取られたり、こちらが破れを取ったりしやすいからです。

しかし、ここで示される「君子夬夬(かいかい)」は、ただ情を断ち切って冷たくなることではありません。

夬において決し去るべき対象(上爻)は、この三爻と陰陽相応じる関係にあり、情において忍びないものが混じりやすい。だからこそ君子は、私情に引きずられず、全体の道理のために決すべきを決する――その“決し方”を正すのです。

その結果として起こり得るのが、

「独り行けば雨に遇う。濡うるが若く慍る有り。」

すなわち、周囲から「上爻と通じたのではないか」「盟約を裏切ったのではないか」と疑われ、濡れ衣を着せられ、怒り(慍り)を受けるような局面です。けれども、君子が私情に囚れて全体の立場を没却することがなければ、「咎なし」に至ります。象伝が「終に咎なきなり」と言うのは、途中の誤解や反発を受けても、最後は筋が通り、過失に落ちない、という収束を示したものです。

この三爻は、進み過ぎが凶を招く一方で、時機が未熟なだけであり、見込みそのものが無いと断ずる必要はありません。密に備え、時を俟ち、決断を外に漏らさず、筋で通せば、疑惑を受けても最終的に咎を免れる――ここが三爻の肝要です。

なお、ここから変ずれば兌為沢となり、兌の「毀折(こせつ)」の意を重く見れば、中途挫折・破談・評判の折損といった形で現れやすい点にも留意が要ります。

◆ 含まれる教え

  • 決意が顔に出るほど露骨になれば、相手に察知されて凶を招く
  • 決すべきは決す、しかし私情と怒気を表に出さず「君子夬夬」で通す
  • 一時の濡れ衣・誤解・反発(慍り)はあり得るが、筋を守れば終には咎なし
  • 計事は密を第一とし、時機が熟するまで表に出さぬこと
  • 変じて兌為沢となるときは、毀折=折損・中断に注意する

◆ 仕事

仕事では、改革・是正・契約の切り替えなど「決する」案件が前に出る時です。

ただし三爻は、急進して“見破られる”危険が強く、根回し不足や感情の露出が、反対派の先制・内部の不信を招きやすい。

進め方の要点は二つです。

一つは、計画を内に秘し、条件が揃った段階で発表すること。

もう一つは、疑惑を受けやすい時なので、証拠・記録・説明筋を整え、誠実に一本の筋で貫くこと。

濡れ衣を着せられても、筋が正しければ最終的に咎を免れます。

◆ 恋愛

縁談や交際では、感情が表に出すぎて誤解を招きやすい時です。

「濡うるが若く慍る有り」は、噂・疑い・周囲の干渉などで、心にもない話が立ち、怒りや不信が生じる象として読みます。

決めるべきこと(関係の線引き、周囲への説明、将来の約束)を決めるのはよいが、焦って押し切ると「凶有り」。

静かに段取りを整え、誠実に筋を通し、時機を待つほど「終に咎なし」に近づきます。兌為沢の毀折を招かぬよう、言葉尻・態度の露骨さには特に注意が要ります。

◆ 沢天夬(三爻)が教えてくれる生き方

三爻が教えるのは、「正しい決断ほど、静かに行え」という生き方です。

決意が骨相に出るほど昂れば、相手は必ず警戒し、こちらは凶に触れる。

一方で、君子は私情に引かれず、全体の道を守って決すべきを決する。

その途中、濡れ衣や反発を受けても、筋を貫けば最後は咎に落ちない。

密に備え、時を俟ち、言葉と表情を制し、決断を“勝ち筋”に乗せて通す。

これが、夬の三爻が示す最も実際的な歩み方です。

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