249、風雷益(ふうらいえき)3爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

249、風雷益(ふうらいえき)3爻

◇ 益とは何か?

風雷益(ふうらいえき)は、「上を減らして下を益す」「入って動き、困窮から脱する」という働きを示す卦です。

上卦は巽(風)、下卦は震(雷)で、風が内へ入り(巽=入る)、雷が下から動き起こす(震=動く)象を持ちます。

益は、ただ「得をする」ことではありません。

大切なのは、

  • 益がどこから来るのか(約定の利益か、回り益か)
  • 何を増やし、何を正すのか(足すより先に“整える”べき所がある)
  • 益が“奢り”に転じて反動を招かないか

という筋道を見誤らぬことです。

益の時は、勢いよりも「誠」「中」「公」を保つほど、益が“正しく”働きます。

◆ 卦全体が教えてくれること

益の卦は、上から下へ潤いが下り、停滞が動き出す局面を示します。

ただし、その進行には段階があります。初爻は「大作(大きな事業、立て直し)」で土台を起こし、二爻は「外より来る回り益」を“守って受ける”筋を固めます。

三爻はその途中の難所にあたり、益が順風満帆に増えるのではなく、凶事(きょうじ)という試練を通して、益を“正しい形に戻す”ことが焦点になります。

つまり「増やす」より先に、「凶事によって歪みを矯め、益が益として機能する状態へ復する」段階です。

◆ 三爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「之(これ)を益するに凶事(きょうじ)を用(もち)う。咎无し。孚(まこと)有りて中行(ちゅうこう)。公(こう)に告げて圭(けい)を用う。」

【象伝】

「益するに凶事を用(もち)うるは、固(かた)く之(これ)を有するなり。」

● 解釈

益の三爻は、「益するのに凶事を用いる」とあります。これは、平時の好都合で増やすのではなく、不作・戦争・急変・災厄といった凶事(きょうじ)を“矯正の契機”として、益を正しく働かせるという意味です。

三爻は位として危地であり、しかも内卦震(動)の極にあって妄動しやすい。さらに互体の坤の中央に居て、変ずれば坎(陥)となる象も重なり、凶事に触れやすい地勢です。そこで、凶事が起こること自体が「罰」ではなく、本来の筋に復するための試練として与えられます。衣服が華美に流れた時に、戦時の制限が働いて衣服が衣服としての本分へ戻る――このように、凶事は“虚飾や過剰”を剥ぎ取り、常態へ復させます。ここが、損の四爻が「其の疾(やま)いを損す」として常態へ復したのと響き合うところです。

ただし三爻は陰柔で、試練を自力だけで押し切る力は乏しい。ゆえに「咎无し」は、強行突破の免罪ではなく、誠(孚=まこと)を立てて中道(中行=ちゅうこう)を守り、救援を正しく求めることで咎を免れるという筋になります。

「公(こう)に告げて圭(けい)を用う」とは、五爻(公)に対して、私心や取り乱しではなく、儀礼にかなった誠信のしるし(圭=けい)をもって訴え、助けを請うことです。凶事のただ中ほど、筋を外した願い方をすれば通らない。だからこそ、孚を立てて中行を守る――それが三爻の要点です。

象伝の「固く之を有するなり」は、凶事を利用する冷酷さではなく、“本来守るべき筋(固有の良さ)を固く保持するために、凶事が矯正として働く”という意味に取るべきでしょう。凶事に遭っても、本分・正理・節度を手放さない者は、結果として咎を免れ、益が益として残ります。

◆ 含まれる教え

  • 益の途中には、凶事(きょうじ)による“矯正”が入ることがある
  • 危地では、勢いで動かず、孚(まこと)を立てて中行(ちゅうこう)を守れ
  • 困難は独力で抱え込まず、公(こう)に告げ、筋を通して助けを乞え
  • 凶事は「崩すため」ではなく「本来の形へ復すため」に働く
  • 欲や利で当たれば失敗し、誠で当たれば活路が開く

◆ 仕事

仕事では、警告的な出来事・突発の大支出・物資不足・制度変更など、凶事(きょうじ)に類する圧力が入りやすい時です。ここで無理に拡張したり、新規に打って出たりすると、震の妄動が災いして破綻しやすい。三爻は「攻めの益」ではなく、**災厄を機に、事業を本分へ戻す“立て直しの益”**と見るべきです。

対策は二つに絞られます。

  1. 火難・病難・事故など「不時の損」を見込んで備える(資金・手当・手順)
  2. 困難の局面では、友人同輩よりも、筋の通る目上・長者・公的立場へ誠意をもって助力を乞う(公に告げ、圭を用う)

この時期の成果は、巧みな利益追求からは出ません。誠と中で耐え、欠損を最小にして常態へ復すことが“益”になります。

◆ 恋愛

縁談は面白くないと見ます。家の反対、事情の噴出、誤解や不安が増幅しやすく、凶事(きょうじ)的な障りが入りやすいからです。ここで押し切ろうとすると「中行」を失って揉めます。

どうしても進めるなら、私情で突っ走るのではなく、公(こう)に告げる――つまり当事者以外の筋の立つ仲介・年長者・家の意向を、誠をもって整え直すことが必要です。整えば「咎无し」に転じますが、欲で動けば反転します。

◆ 風雷益(三爻)が教えてくれる生き方

三爻が教えるのは、危機を“益の形”へ変えるには、誠と中道が要るという生き方です。

凶事(きょうじ)は苦しい。しかし、それは本来の筋へ戻るための試練でもある。

取り乱さず、孚(まこと)を立て、中行(ちゅうこう)を守り、公(こう)に告げて圭(けい)を用う。

そうして筋を通して助けを得るなら、凶は凶のまま終わらず、咎なく“正しい益”として残ります。

危地ほど、派手な策より、姿勢を正すこと。

これが、益の三爻の歩み方です。

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