周易64卦384爻占断
247、風雷益(ふうらいえき)初爻
◇ 益とは何か?
風雷益(ふうらいえき)は、「増やす」「潤す」「足りない所へ回して全体を生かす」ことを象徴する卦です。
上卦は巽(風)で「入る・浸透する」、下卦は震(雷)で「動く・奮い立つ」。上から“入り”下から“動く”ことで、停滞していたものがめぐり始め、乏しさが改まり、伸びる力が生まれます。
益は、ただ与えられて増える卦ではありません。
上からの援け(資力・人材・機会)が“入って”くると同時に、下が“動いて”働くことで、はじめて益が確かな実りになる――その「潤いと勤勉の一致」を教える卦です。とくに春の耕作・播種の象を帯び、民の飢えを救い、生活の基礎を厚くする方向に益が働くのが本義です。
◆ 卦全体が教えてくれること
益の卦は、
- 欠乏の克服へ向かう転機
- 外からの助力が入り、内側が動いて成果へつなぐ時
- 公益的・基礎的な営み(生活を支える仕事)を厚くすべき時
を示します。
ここで大切なのは、益を「僥倖」や「棚から牡丹餅」として扱わないことです。
益は“入ってくる”だけでは足りず、“動いて作る”ことが要ります。つまり、助力を受けた者が、まず足元(生活・基盤・生産)を厚くし、大きな仕事、公共事業などを為すところに、元吉が生まれます。
◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「用(も)って大作を為すに利し。元吉。咎なし。」
【象伝】
「元吉にして咎なきは、下(しも)事を厚くせざるなり。」
● 解釈
初爻は、益の卦の「はじまり」に当たり、益が“形”になる入口です。ここで言う「大作」は、派手な名誉の仕事ではなく、欠乏を補うための大きな働き――とくに耕作・生産・生活基盤を整えるような公益的な仕事を指します。
益の卦は、上卦の巽が“入る”、下卦の震が“動く”象です。互体の坤(土)を含む見方をすると、「上から入れて、下から動かして土を起こす」――耕作の象が強く出ます。だから初爻の「大作」とは、益のはたらきを最も正しく使う道であり、ここに「元吉」とされます。
そして「咎なし」とわざわざ言うのは、益される側(下)が乏しく困っていた、その“咎(欠乏の不都合)”が解消される、という意味が強いからです。象伝はそれをさらに具体化し、下にいる者が自分の足元すら整えられないような時にこそ、生活の基礎を厚くする大きな仕事を為して、はじめて元吉・咎なしを得るのだ、と説きます。
要するに――
益の初爻は「助力が入ったなら、まず基礎を厚くし、実のある大仕事で欠乏を埋めよ」という戒めであり奨励です。
◆ 含まれる教え
- 益は「受け取る」だけで完結しない。「動いて作る」ことで実になる
- 大作とは、大きな仕事であり、生活・生産・基盤を厚くする仕事である
- 欠乏を埋めることが、益の第一義(咎を消す)
- 投機や僥倖に走ると、益の勢いがかえって破綻を招く
- 助力を得た時ほど、慎みと勤勉で地盤を固めよ
◆ 仕事
仕事では、資金・人材・後援など「外からの助力」が入りやすい時です。ここでの最善は、拡大の夢を追うよりも、まず基礎工事を徹底することです。
- 生活や組織の基盤(設備・仕組み・人員配置)を整える
- 生産性の上がる“地味だが大きい改善”に着手する
- 目上の支援を得て、計画を大きく実行に移す
ただし、他人の財布をあてにした投機・背伸びは凶に転びやすい。益の時ほど「手堅い大作」に限る、という判断が要ります。
◆ 恋愛
恋愛では、環境が整う・縁が入りやすい象があります。が、ここでも「足元を厚くする」が要点です。
- 生活・将来設計・周囲への筋道など、土台を固めるほど進展する
- 好機に浮かれて約束を急ぎ過ぎると、後で負担になる
- 誠実な努力(会う頻度、連絡、家族への配慮)を積み上げるほど“益”が続く
益は「増える」卦ですが、増やすべきは感情の高揚より、信頼の蓄積です。
◆ 風雷益(初爻)が教えてくれる生き方
初爻が教えるのは、益の力を“正しく使う”姿勢です。
「助けが入ったなら、まず基礎を厚くし、大きな仕事を行って欠乏を埋めよ。
益は偶然ではなく、勤勉と公益の一致によって“元吉”となる。」
益の入口に立つ者は、勢いに乗る前に足元を整える。
その堅実さが、咎を消し、真の豊かさを長く保たせるのです。


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