237、雷水解(らいすいかい)3爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

237、雷水解(らいすいかい)3爻

◇ 解とは何か?

雷水解(らいすいかい)は、「解ける」「ほどける」「緊張が緩む」ことを象徴する卦です。

上卦は震(雷)、下卦は坎(水)。雷が鳴り、雨が降って、停滞していた空気が一気に動き出し、恐れや束縛がほどけていく象を持ちます。

ただし解は、ただ楽になる卦ではありません。

難みが解けるには順序があり、原因を作っているもの(小人・奸佞・不正・過剰)を除かなければ、真の解消には至らない。

そのため解の卦には、「解ける側の動き」と同時に、「解かれるべきものの淘汰」もはっきりと含まれます。

三爻は、まさにその「解かれるべきもの」が目立ってしまう地点であり、卦の流れに逆らって“身の丈を超えた座”に居座ることの危うさを告げています。

◆ 卦全体が教えてくれること

解の卦は、苦労がほどけ、出口が見えてくる時を示します。

しかし、そこで大切なのは、力任せの前進ではなく、

  • まず内部のしがらみをほどく
  • 原因となる歪みを取り除く
  • 分を守り、筋を正す
  • 誤解・疑念・争いを未然に断つ

という、整理と修正の手順です。

解は「正しく解く」ことで吉となり、解の勢いに紛れて不相応な地位や利益を抱え込むと、かえって争いを招きます。

三爻はその“逆流”を強く戒める爻です。

◆ 三爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「負(お)い且(か)つ乗(の)る。寇(あだ)の至(いた)るを致(いた)す。貞吝(ていりん)。」

【象伝】

「負(お)い且(か)つ乗(の)るは、また醜(にく)むべきなり。我(われ)より戎(じゅう)を致(いた)す、また誰(だれ)をか咎(とが)めん。」

● 解釈

「負う」は荷を背負う姿で、賤しい業・下の役を象徴し、「乗る」は輿に乗ることで、貴い位・上の座を象徴します。

にもかかわらず「負い且つ乗る」とあるのは、分をわきまえない混在――つまり、実力や徳に見合わぬ高位に居ながら、内実は卑しい利得や私心を抱え込んでいる姿を示します。

この三爻は、解の時に「除かれるべき小人」の気配を帯び、しかも内卦の極にあって目立ちやすい。

そのため、外からは「不相応」「奪われても仕方ない」と見られやすく、やがて「寇の至るを致す」――嫉み・攻撃・盗難・訴え・失脚など、形を変えた“奪取”を招きます。

そして爻辞は「貞吝」と言います。

正しさを装ってその地位に固執すればするほど、かえって吝(悔い・窮地)に陥る、という警告です。

象伝がさらに厳しく「我より戎を致す、また誰をか咎めん」と言うのは、外から来る災いの根が、すでに自分の側にあるからです。攻められても、怨むべきは相手ではなく、招いた自分自身――そう断じています。

また、この爻は“火の性質(離)”にも触れやすく、不用心から火災・盗難などの象にもつながります。

解の流れは本来「ほどく」方向ですが、ここで無理に飾り立てたり、背伸びを続けたりすると、ほどけるどころか崩れる、という構図になります。

◆ 含まれる教え

この爻が告げる教訓は明快です。

  • 分に過ぎた座は、人の憎しみを招く
  • 立場と内実がねじれると、攻撃の口実を与える
  • 外からの災いは、往々にして自分が呼び込む
  • 正しさの仮面で固執すると、吝に落ちる
  • 「降りる・返す・引く」ことが、解の本筋になる

解の時は、軽くなるべき時です。

重い荷(私心・見栄・分外の責任)を抱えたまま高みに乗れば、ほどけるはずの運が逆に絡まります。

◆ 仕事

仕事では、典型的に

  • 実力以上の役職・案件を抱える
  • 権限と責任の釣り合いが崩れる
  • 目立つ成果を急いで反感を買う
  • 内外から不正・不備を突かれる
  • 盗難・情報漏えい・火気事故など“不用心の災い”が起きやすい

といった形で現れます。

この爻を得たなら、攻めるよりも「降ろす」ことが先決です。

背伸びの案件は縮小し、役割の線引きを明確にし、権限を正規の形に戻す。

争いを起こさぬために、成果よりも整備・点検・規程・手順の回復が吉になります。

◆ 恋愛

恋愛では、

  • 立場に見合わぬ背伸び(過剰な演出・見栄・無理な約束)
  • 不釣り合いから生じる嫉妬・干渉
  • 三角関係・誤解・噂による“攻め”
  • 相手に合わせすぎて自分を失う

などが起きやすい象です。

「負い且つ乗る」は、関係の中で“役割がねじれる”ことでもあります。

相手に良く見られたい一心で無理を重ねると、むしろ寇を招く――嫉妬や疑い、攻撃的な言動を引き出してしまう。

ここは飾りを落とし、等身大に戻すことが解の道です。

◆ 雷水解(三爻)が教えてくれる生き方

三爻が示す生き方は、こう要約できます。

「災厄を解くには、まず分外を降ろせ。

招いた災いは、自分のねじれを正すことでしか解けない。」

  • 背伸びをやめ、役割と実力を一致させる
  • しがみつくより、手放して整える
  • 攻撃を恐れるより、攻撃の口実を消す
  • “正しさ”を掲げるより、筋に戻る

解の卦の中でこの爻は、「解かれる前に、いったん降りる」ことを教えます。

そこで身を正せば、解の本来の流れ――難みがほどけ、身軽になって進める道――が、次に開いてきます。

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