周易64卦384爻占断
235、雷水解(らいすいかい)初爻
◇ 解とは何か?
雷水解(らいすいかい)は、「ほどける」「解ける」「難がほどけていく」ことを象徴する卦です。
上卦は震(雷)、下卦は坎(水)で、険(坎)の中に滞っていたものが、雷の動きによって一気に緊張をほどき、閉塞を解き放つ象を持ちます。
ただし「解」は、何でも強引に進めて解決する卦ではありません。
険を抜ける道筋が見え始める一方で、結び目(しがらみ・旧縁・小人の介在)が残りやすく、ここでの軽率は“再び絡まる”原因になります。
解の要諦は、ほどける機運を生かしつつ、ほどけ方を誤らないことにあります。
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◆ 卦全体が教えてくれること
解の卦が示すのは、
- 難が解ける兆しが立つ
- しかし、解け切るには段取りと順序が要る
- 小さな過失が再び障りを作りやすい
という局面です。
解は「陰の小人を除いて難みを解く」ことを爻象の主眼にしますが、卦中の陰がすべて一様に咎を負うわけではありません。
初爻は陰でありながら、険の外に免れ、しかも応爻として九四(解を成就させる陽)に通じるため、ここでは特に「咎なし」と断じられます。
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◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「咎(とが)なし。」
【象伝】
「剛柔(ごうじゅう)の際(まじわ)りは義(ぎ)咎(とが)なきなり。」
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● 解釈
初爻は陰爻で、本来なら「咎の生じやすい位置」です。
にもかかわらず爻辞が冒頭から「咎なし」と断言するのは、“咎があるはず”という疑いを前提にしたうえで、それを打ち消しているからです。
その理由を象伝は「剛柔の際りは義において咎なきなり」と述べます。
ここでいう「際り」は、ただ接しているという意味にとどまらず、剛(陽)と柔(陰)が交わり、連携しうる関係そのものを指します。
陰が陽に順い、陽が陰を率いて相交るのは物の本然であり、その“正当な交わり”まで罪とするのは義に反する――それが象伝の論拠です。
さらに初爻は、卦の主題である坎の険から外れ、九四を応として仰ぐ位置にあります。
ゆえに、陰であっても「媚び諛って権勢に喰い入り私利を図る小人の咎」とは同列にならず、むしろ難を解く側へ回りうる。
この条件が整っているため、初爻は「咎なし」となるのです。
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◆ 含まれる教え
この爻が含む教訓は、次の点に尽きます。
- ほどけ始める時ほど、功を焦って動かない
- 旧いしがらみが切れにくいので、まず整える
- 目上・有力者の助力(九四)を正しく仰ぐ
- 取り入りや甘言で喰い込む者を見抜き、重用しない
- “交わること”自体は咎ではないが、交わり方を誤れば咎となる
解の初めは、解決の入口であって完了ではありません。
ここでの最良は、積極的に利を取りに行くことではなく、過ちを戒め、足りぬ所を補い繕って、解の道筋を確かなものにすることです。
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◆ 仕事
仕事では、難局から抜け出せそうで抜け切れない、という形で出やすい爻です。
先の見込みは立っているのに、旧来のしがらみや周辺の事情が残り、容易に埒が明かない。そこで、
- 大きな攻めより、現状の整備・修復を優先する
- 目上やキーパーソンの支援を取り付けて進める
- 取り入りで影響力を得ようとする人物を見抜き、用いるなら用いる所だけに限る
が要点になります。
交渉・取引は、動けばまとまるように見えても、強いて動かしてまとめた結果が当方の損になりやすい。
今は深追いを避け、「整える」「待つ」「助力を得る」を主とする方が賢明です。
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◆ 恋愛
恋愛では、関係がほどけそうでほどけ切らない、気持ちはあるのに周囲の事情や家の同意が障りやすい、という象になりやすい爻です。
当人同士は満足しやすい一方で、一家・親族との折合いに難が出ることがあるため、
- 無理に押し切らず、関係を整えながら進める
- 周囲の理解を得る段取りを作る
- 甘言で間に入って攪乱する者を警戒する
が大切になります。
まとまりは「作る」というより、「いつの間にか出来てしまう」形になりやすいので、拙速に結論へ飛びつかないことが吉です。
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◆ 雷水解(初爻)が教えてくれる生き方
初爻が教えるのは、こういう姿勢です。
「ほどけ始めた時こそ、功を焦らず、筋を立てよ。」
- まずは絡まりを増やさない
- 正しい助力に従い、義を保って交わる
- 取り入りや私心の介在を断つ
- 修復と段取りによって、解を完成へ導く
解の初めに咎がないのは、“何もしないから”ではなく、義にかなった交わり方を守るからです。ここを外さぬ者だけが、真に「解」を成就させます。


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