周易６４卦３８４爻占断
２３３、水山蹇（すいざんけん）５爻
◇ 蹇とは何か？
水山蹇（すいざんけん）は、「進もうとしても進めない」「険（けん）に阻まれる」時を象徴する卦です。上卦は坎（水）で険難・障碍を示し、下卦は艮（山）で止まる・踏みとどまるを示すため、前へ出ようとすると危うく、むしろ“止まる知恵”によって身を保ち、道を整えていく局面を教えます。蹇は単なる不運ではなく、険を見て軽挙を慎み、節度を守って、助けを得ながら難局を越えるための作法を示す卦です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
蹇の卦が示すのは、状況そのものが「進撃に不向き」であるという現実です。強引に押し切れば難は深まり、焦って打開策を弄すれば、かえって過敗を招きやすい。ゆえに蹇の要諦は、止まるべき時に止まり、力を合わせるべき時に人を得て、難を“解く形”へ移していくことにあります。五爻は君位にあって卦主であり、難が最も大きく見えやすい地点ですが、同時に、節に中（あ）たって援助を招き寄せ、局面を動かす要（かなめ）ともなります。
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◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「大（おお）いに蹇（なや）み、朋（とも）来（きた）る。」
【象伝】
「大（おお）いに蹇（なや）み、朋（とも）来（きた）るは、中節（ちゅうせつ）をもってなり。」
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● 解釈
五爻は君位に在り、蹇の卦主として難局の衝に立たされるため、その悩みは一身の小難に留まらず、責任の重さと連動して「大いに蹇む」と表されます。しかも五爻は坎の中に在って、険のただ中に身を置く象ですから、見通しの悪さ、障碍の多さ、進退の窮屈さがいよいよ切実になります。しかし、この爻が同時に告げるのは「朋来る」です。これは、王臣として匪躬（みのためにあらず）に尽くす二爻、来りて連なる四爻、さらに大人を見る上爻などが力を合わせ、蹇難打開へ向けて集まってくることを意味します。象伝の「中節をもってなり」とは、剛中の徳により、過ぎず足らずの節度を守って時宜に中（あ）たり、軽挙や偏執に落ちずに対処するからこそ、人が離れず、援けが来るという要点です。つまり、難は大きいが、節度ある舵取りができれば、単独で抱え込まずに局面を動かせる段に入る、ということです。
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◆ 含まれる教え
この爻の骨子は明快です。難局の中心に立つ時ほど、独力での突破は危うく、助力を得る道を整えることが先決になる。しかも助力は、焦りや強引さでは来ません。節に中たり、為すべきことを為し、為さぬべきことを抑える、その“中正の運び”が人を招くのです。大いに蹇む時は、退路を断って突進するのではなく、助けを活かして難をほどく筋道を作ること、これが五爻の教えです。
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◆ 仕事
仕事では、責任が重く、問題が複合し、単独で抱えるほど難が増しやすい局面です。ここで必要なのは、助力を正しく取りに行くこと、すなわち上司・同僚・専門家・関係部署など「朋」を得て役割分担を明確にし、示談・調整・根回しといった“和して解く”手段へ舵を切ることです。ただし新規の起業・拡張・大胆な方針転換は不利になりやすく、むしろ内を整頓し、損失拡大を止め、最後の踏ん張りに資源を集中するのが節に中る道となります。交渉・談判が難渋しやすいのもこの爻の象であり、人に口を利いてもらい、和解・示談の形で収束させるのが得策です。
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◆ 恋愛
恋愛では、当事者だけで進めようとすると、周囲の事情や口出し、タイミングの悪さが重なって「行き悩む」象が出やすいところです。けれども「朋来る」は、理解者・仲介者・相談できる相手が現れて、関係を守るための現実的な道筋が見つかる兆でもあります。焦って結論を迫ったり、独断で押し切ったりせず、状況を整えること、関係者の摩擦を減らすこと、節度ある距離感で進めることが吉に向きます。縁談においては、傍からの意見が多く迷いが生じやすいので、急がず、整えてから決めるのがよいでしょう。
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◆ 水山蹇（五爻）が教えてくれる生き方
五爻が教える生き方は、「大きな難の中では、節度が人を呼び、独りで背負わぬ者が道を開く」という一点に尽きます。難は大きい。しかし、節に中たり、分を越えず、順序を守り、助けを得て、和して解く。そうすれば蹇は固定された不運ではなく、ほどける難へと変わっていきます。今はまさに最後の踏ん張りどころであり、独力で押し切るより、助力を活かして“解ける形”へ持っていくことが、五爻の吉へ至る道です。
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