232、水山蹇(すいざんけん)4爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

232、水山蹇(すいざんけん)4爻

◇ 蹇とは何か?

水山蹇(すいざんけん)は、「行き詰まり」「難儀」「前進しようとして阻まれる局面」を象徴する卦です。上卦は坎(水)で険難・障碍を、下卦は艮(山)で止まる・踏みとどまるを表し、水の険が山の前に立ちふさがって進路を塞ぐため、正面突破が利きにくい象を持ちます。蹇は、力で押し切るよりも、止まるべき時に止まり、頼るべきものに頼り、道筋を整えてから動くという「難を難として扱う知恵」を教える卦です。

◆ 卦全体が教えてくれること

蹇の卦は、進めば難に陥り、無理をすれば損を増やすが、止まり方と対処法を誤らなければ、難局はやがて峠を越える、という筋道を示します。特に中盤以降は、単独で打開するよりも、力ある者に連なり、先立たず、誠実に従って局面を移すことで、難が解ける方向へ移行しやすくなります。四爻は内卦を出て外卦へ移る入口にあり、まだ険は消えていないが、連なり方しだいで「前方の明るさ」が見え始める地点を示す爻です。

◆ 四爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「往(ゆ)けば蹇(なや)み、來(きた)れば連(つら)なる。」

【象伝】

「往(ゆ)けば蹇(なや)み、来(きた)れば連(つら)なるは、位(くらい)に当(あた)りて実(まこと)するなり。」

● 解釈

四爻は外卦坎の中に位置し、本来なら険を構える側に属するように見えますが、爻辞は初爻・三爻と同じく「往けば蹇み」と言い、ここで前へ出れば険中に陥ることを明確に戒めています。では「来れば連なる」とは何かといえば、無理に先頭へ出ず、退いて「連なるべき相手」に身を寄せ、結びついて難を免れる道を取ることです。この爻は互体の離の主爻として、離が「付く」「附麗する」性質をもつまま、三爻・五爻という「実(まこと)ある陽」に連なり着く象を成します。象伝が「位に当りて実するなり」と述べるのは、四爻が陰を以て陰位に居り、自分の力の弱さを自覚して先立たず、誠実に従って連なるため、その孚(まこと)が疑われず、連なる相手の側もまた誠実にこれを引き連れる、という筋を示すものと見るのが要です。ここでの「来」は単なる退却ではなく、むだな前進をやめて、正しく結び直す方向への転回であり、蹇の峠に差し掛かって光が見え始める態勢を作ることに当たります。

◆ 含まれる教え

この爻が告げる教訓は、蹇の只中で最も危険なのは「自分の考えを通そうとして先立つこと」であり、最も確かな道は「力ある者に付き、連なって進退を整えること」だという一点です。単独で打開しようとすると険に落ちやすいが、誠実に従い、共同の枠に身を置けば、難は増さず、援助が働いて局面が移ります。独立より共同、主張より連帯、突破より附随――これが四爻の骨子です。

◆ 仕事

仕事では、押し切り・単独決裁・強行スケジュールが「往けば蹇み」を招きやすい局面です。ここは、主導権を取りに行くより、実力と責任を持つ人(部署・上位者・経験者)に付いて方針を合わせ、共同で進めることが得策になります。自分の案を通すより、相手の枠組みに乗せて実現するほうが通りやすく、援助者を得て安堵する兆があります。新規に独立して攻めるよりも、連携・共同・後追いの実務で成果が立ちやすい時です。

◆ 恋愛

恋愛では、前へ詰めて結論を迫るほど、かえってこじれやすい象を含みます。関係を進めるなら、相手の状況や周囲の流れに「連なる」こと、つまり先走らず、相手が安心できる枠に合わせて整えていく姿勢が吉です。焦って押し切らなければ、別口から整った縁の助け(紹介・周囲の後押し)が入りやすく、かえって良縁に繋がることがあります。強引な決着より、連なり直して時を待つことが肝要です。

◆ 水山蹇(四爻)が教えてくれる生き方

四爻が教える生き方は、「難の最中ほど、先頭に立たず、誠実に連なれ」ということです。自力で切り開くのではなく、力ある者の実に付いて、共同の道を歩む。そこに、まだ険は残りながらも、峠を越える兆しが生まれます。自分の考えを通すより、人のために喜んで働き、結果として自分も救われる――その循環を作れる者が、蹇の途上で足場を得て、次の明るい局面へ移っていけるのです。

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