周易64卦384爻占断
224、火沢睽(かたくけい)2爻
◇ 睽とは何か?
火沢睽(かたくけい)は、「背く」「隔たる」「一致しない」ことを象徴する卦です。
上卦は離(火)、下卦は兌(沢)であり、火は上へ燃え上がり、沢は下へ潤い沈むため、
本質的に方向が逆で、相い和しにくい象を持ちます。
睽は争いそのものを勧める卦ではありません。
むしろ、
- 人の心が離れやすい時
- 立場・意見・価値観が食い違う時
- 正面から進めば必ず衝突する時
において、どう背反した状況に処し、どう和を保つかを教える卦です。
強引な一致を求めれば破綻し、距離を見極めて対処すれば咎を免れる、
その「分かれてなお道を失わぬ智慧」が睽の核心です。
◆ 卦全体が教えてくれること
睽の卦は、
- 和合は困難
- 正攻法は通りにくい
- しかし完全な断絶ではない
という状況を示します。
この卦において重要なのは、
「どう一致するか」ではなく、「どうズレたまま道を保つか」です。
相手を正そうとすれば対立が深まり、
自らを曲げれば道を失う。
そこで必要となるのが、距離感・間接性・柔軟な通路です。
二爻は、睽の中にあって
なお通じる一点の細道を示す爻であり、
形式にこだわらず、道義を失わぬ関係のあり方を教えています。
◆ 二爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「主(しゅ)に巷(ちまた)にて遇(あ)う。咎(とが)なし。」
【象伝】
「主(しゅ)に巷(ちまた)にて遇(あ)うは、いまだ道(みち)を失(うしな)わざるなり。」
● 解釈
二爻は陰爻で中にあり、柔順でありながら、
応爻である五爻(主)と陰陽相感しています。
しかし、睽の卦の中にあるため、
堂々と正面から相まみえることはできません。
位も正しくなく、礼を尽くした公式の交わりは不可能です。
そこで用いられるのが「巷」です。
巷とは、正規の場でも、公の儀礼の場でもなく、
非公式・非正規・しかし現実的な接点を指します。
「主に巷にて遇う」とは、
- 正面からではなく
- 裏口・私的経路・間接的手段によって
- それでもなお、主と通じる
ということです。
形式は整っていませんが、
心が通じ、道義が失われていないため、
「咎なし」とされます。
象伝の
「いまだ道を失わざるなり」
とは、礼を欠いても、義を欠いていない、という意味です。
◆ 含まれる教え
この爻が教えるのは、睽の時における実践的な智慧です。
- 正面衝突を避けよ
- 形式に固執するな
- しかし道義は捨てるな
- 裏道・間道にも正しさはある
- 和合は「形」ではなく「心」で測れ
睽の時においては、
遠回りこそが最短となることがあります。
◆ 仕事
仕事においては、
- 正規ルートでは進まない
- 表立った交渉は難航する
- 上司・責任者と直接話せない
といった状況が生じやすい時です。
しかし、
- 裏方
- 仲介者
- 非公式な相談
- 信頼関係による調整
を用いれば、突破口が見つかります。
正面突破や対立姿勢は凶。
柔らかく、しかし誠実に、が最善です。
◆ 恋愛
恋愛では、
- 周囲に反対がある
- 立場や環境が噛み合わない
- 表に出せない関係
といった象を含みます。
しかし、
当人同士の心は通じており、
形にこだわらなければ成立する余地があります。
復縁や再会、
一度離れた縁が裏から戻る、
という象も含まれます。
ただし、周囲との軋轢を無視すると後に苦しみます。
◆ 火沢睽(二爻)が教えてくれる生き方
二爻が教える生き方は、きわめて現実的です。
「道は一つではない。
正門が閉ざされても、道義を失わぬ小径は必ずある。」
- 無理に正面から行かない
- しかし逃げもしない
- 柔らかく、誠実に、間をつなぐ
睽の時においては、
力よりも工夫、
主張よりも調整、
形式よりも本質。
それを体得した者は、
背反の中にあっても、
なお咎なく歩み続けることができるのです。


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