周易64卦384爻占断
223、火沢睽(かたくけい)初爻
◇ 睽とは何か?
火沢睽(かたくけい)は、
火(離)が上に、沢(兌)が下にあり、
上と下が背き合う配置から「相違・不和・すれ違い」を象徴する卦です。
ただし、睽は「争い」そのものではなく、
価値観・立場・心の方向が異なるために
• 気持ちが噛み合わない
• 誤解が生じる
• 協力が難しい
といった “不一致から生じる停滞” を示します。
しかし同時に、
不一致の中で 正しさを保つ者は、やがて合一へと導かれる
という転化の道も含んでいます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
睽は、
• すれ違いが表面化しやすい
• 人間関係の距離が乱れやすい
• 互いに誤解して反発しやすい
という「背き」の時です。
ただし、安易に力で合わせようとすれば逆効果になり、
• 焦らず、
• 相手の変化を待ち、
• 自分は正しい位置に静守する
という柔らかい対処が吉を呼びます。
特に初爻は睽の“始まり”であり、
大きな対立ではなく、
“すれ違いの気配が出始めた段階” を示しています。
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◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「悔(くい)亡(ほろ)ぶ。馬を喪(うしな)う。逐(お)うことなかれおのずから復る。悪人を見る。咎(とが)なし。」
【象伝】
「悪人を見るは、もって咎(とが)を辟(さ)くるなり。」
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● 解釈(内容を一つの流れとして記述)
初爻は睽の始まりで、もともと「背反による悔(くい)」が生じやすい位置ですが、爻辞はそれが「亡ぶ=消える」と告げています。その理由を象徴的に示すのが「馬を喪う。逐うことなかれおのずから復る」です。
初爻の応位は四爻であり、四は互体の坎の主で“馬”に象られます。坎の馬は心の落ち着かない“奔馬”で、背きによって初爻から離れていく者を表します。しかし重要なのは、この馬(四爻)が離れる原因が「初爻に非があるからではなく、四爻側が不正であるため」だという点です。
よって、初爻がすべきことは追いかけることではなく、
正しさを曲げずにそのまま静守すること です。
そうすれば、奔馬は疲れて飼い主を思い出すように、
相手は自然と戻り、睽の悔は消えていきます。
爻辞後半「悪人を見る。咎なし」は、
不正の相手(四爻)と顔を合わせても、
初爻が正しさを貫き、無理に合わせようとしない限り、
過ちを避けて無事を得る という意味です。
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◆ 含まれる教え
初爻のメッセージは極めて明瞭です。
- 追いすがるほど不和は拡大する
- 正しさを保ち、相手に合わせて自分を曲げてはならない
- 無理に説得・統一しようとしてはならない
- 相手の変化を待つことで、自然と関係は回復する
- “悪人を見る”ほどの不快な場面でも、こちらが動じなければ害は及ばない
睽は背きの時ですが、
初爻は 「背きの始まりに、正しく待て」 と教えています。
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◆ 仕事
- 共同作業やチーム内に、誤解・不一致が生じやすい時です。
- 説明しても通じにくく、押しとどめようとすると反発を招きます。
- 問題を急いで解決しようとせず、
時間を置いて自然な収束を待つ方がよい とされます。
特に、離れていく相手・協力しない相手に対して、
追究したり強く迫ったりすると泥沼化します。
一旦“距離を取る勇気”が吉。
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◆ 恋愛
- 相手とタイミングが噛み合わない
- 気持ちの温度差が生まれやすい
- 誤解が起き、連絡のすれ違いが出やすい
この時、
追いかける・詰める・問い詰める
のは完全な逆効果です。
こちらが静かに構えていれば、
相手の方から歩み寄りやすい時です。
復縁を問う占でも、
「追うな、待てば戻る」という象がしばしば出ます。
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◆ 火沢睽(初爻)が教えてくれる生き方
- 焦って関係を正そうとしない
- 時とともに戻るものは、追わなくても戻る
- 不正・不誠実な相手に対しても、過度に戦わない
- “正しさを守る静かな強さ”こそが不和を解く力となる
- 自分を曲げて相手に合わせるほど運は乱れる
睽の始まりにおいて、
初爻は 「急がず、争わず、自然な回復を待つ」 という
深い知恵を指し示しているのです。

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