周易64卦384爻占断
219、風火家人(ふうかかじん)3爻
◇ 家人とは何か?
風火家人(ふうかかじん)は「家を治める道」を説く卦であり、
家庭内の秩序・節度・役割・礼が、日々の幸福と繁栄の基礎であることを示します。
上卦の巽(風)は従順・教化、
下卦の離(火)は明徳・礼。
家庭の中が礼によって明るく照らされ、その明るさを風が全体へひろげていく象です。
三爻は離の極点に位置し、火の勢いがもっとも激しくなるため、
行き過ぎた厳しさや華やかさが現れやすい場所です。
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◆ 卦全体が教えてくれること
家人の本義は「家庭に節度ありて、家道立つ」。
家庭は近しい関係ゆえ、緩みに失すれば乱れ、厳に偏すれば苦しみが生まれます。
- 家の秩序を守ること
- 自らの役割に応じたふるまい
- 礼と慎みを保つこと
この三つが重要で、三爻はその節度が最初に揺らぐ警告点です。
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◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「家人嗃嗃(かくかく)。悔厲(かいれい)あれども吉。婦子嘻嘻(きき)。終(つい)に吝。」
【象伝】
「家人(かじん)嗃嗃(かくかく)たるは、いまだ失わざるなり。婦子嘻嘻(きき)たるは、家節(かせつ)を失うなり。」
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● 解釈
六三は離の上に位置し、火勢が最も強く現れる段階です。そのため家庭内に、過ぎた厳しさと、過ぎた緩みの両方が生まれやすくなります。
嗃嗃(かくかく)とは、火が激しく燃え立つ表現から転じたことばで、口うるさく叱ったり、厳格を通り越したり、怒りやすくなったりする過度の厳しさを意味します。しかし象伝は「いまだ失わざる」と述べ、厳しさが過ぎてはいるものの、まだ家道は崩れておらず、むしろその厳しさゆえに乱れを抑えられている段階であるとします。これが爻辞の「悔厲あれども吉」に当たります。
一方、嘻嘻(きき)は、さわがしく浮つき、華やかすぎ、甘く緩む様子を表し、これは節度を失った家庭の乱れにつながります。象伝が「家節を失う」と厳しく断じている通り、緩みの過度は必ず破れへ向かいます。
つまり三爻の本質は、厳しさと緩みのどちらに偏しても危険が潜み、家庭の秩序が揺らぐことを示すものです。
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◆ 含まれる教え
三爻が伝える核心は次の通りです。
- 行動が極端に流れやすい
- 強く出てもまとまらず、弱く出ても侮られる
- 感情が激しくなり、慎みを失いやすい
- 厳しすぎれば小さな悔いはあるがまだ保てる
- 緩みすぎれば必ず節度を失い、家道が乱れる
つまり、
「中庸こそが家を守る鍵である」
という大切な戒めが込められています。
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◆ 仕事
仕事では運気が偏りやすく、極端さが表面化しやすい時です。
- 強気すぎれば反発され、弱気すぎれば侮られる
- 判断がぶれやすく、勢いでの決断は失敗しやすい
- 調整力・節度・冷静さが不可欠
- 感情に任せた行動は大きな損失につながる
事業においては、
大胆すぎても小心すぎても失敗するため、
「過ぎないこと」 が最大の吉となります。
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◆ 恋愛
恋愛は不調・不安定。
- 感情の衝突が増える
- 強く求めてもまとまらず、甘く流れても乱れる
- 節度の欠如が相手に不信感を与える
- 関係の継続が難しい時期
縁はまとまりにくく、
仲介者も双方の「厳しさ」「だらしなさ」に手を焼くような配置となります。
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◆ 風火家人(三爻)が教えてくれる生き方
家人三爻の人生メッセージはこうです。
「節度を失わないこと。
厳しすぎても緩みすぎても道は乱れる。」
- 感情が強く動く時こそ、一度立ち止まる
- 強行・放縦のいずれにも傾かない
- 家(内側)を保つには“度”がすべて
- 私心や浮つきが乱れを招く
- 冷静さを取り戻せば吉へ転じる
三爻は、火が最も強く燃える場所であるがゆえに、
節度という「枠」を学ばせる重要な段階です。

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