197、天山遯(てんざんとん)5爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

197、天山遯(てんざんとん)5爻

◇ 遯とは何か?

天山遯は、

危機を避け、時を待つ智慧 を説く卦です。

天は上へ遠ざかり、

山は下にどっしりと止まる。

その象から、

「賢者は争わず、潔く退いて身を守る」

という態度が読み取れます。

退くとは、

“逃げる”のではなく、

退いてこそ守れるものがある

という大局観のあらわれです。

◆ 卦全体が教えてくれること

遯は、

前進すれば傷つき、留まれば巻き込まれる時。

退くことが唯一の正道となる局面です。

しかし、遯には段階があり、

五爻はその中でも最も理想的な「退き方」を示します。

四爻はまだ未練や迷いが残る段階でしたが、

五爻はすでに迷いがなく、

明るさと品位を保ちながら退く境地 に到達しています。

◆ 五爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「嘉(よ)く遯(のが)る。貞吉。」

【象伝】

「嘉く遯れ貞にして吉なるは、志を正すなり。」

● 解釈

「嘉(よ)く」とは、

“喜び楽しんで”という意味です。

これは五爻が

・二陰から十分に距離を置き

・危険や妨害を離れ

・退くことに不安や煩いのない位置

にあることを示しています。

四爻の「好遯」が

“好むところを残しながら穏やかに退く”であったのに対し、

五爻の「嘉遯」は、

積極的に、自らの意志で気持ちよく退く

という段階です。

地位も高く、権利も名誉もある(=王の寵恩にも浴する)が、

それに執着せずに身を引く。

まさに志の正しさを示し、

だからこそ「貞吉(正しくして吉)」となるわけです。

◆ 含まれる教え

  • 退く時は、遅れず、迷わず、潔く
  • 権勢・利益の誘惑にとらわれない者が本当に強い
  • 退くときこそ、後のことまで見据えた準備が必要
  • 良き“引き際”を知る者は吉を得る

五爻は遯の卦の中でも、

最も美しい退き方を示す位置だと言えます。

◆ 仕事

仕事運では、

退職・転身・撤退・縮小などが吉に働きやすい時期 です。

しかし、

「逃げ出すための退職」ではありません。

五爻の遯は、

後任の準備・引継ぎ・条件交渉なども整え、

誰も傷つけず、円満に退く姿勢

を象徴します。

そのため、

・退職金や慰労の待遇が良い

・後任がうまく決まり混乱がない

・円満退社がしやすい

という“よい引き際”が得られる吉象です。

事業においては、

今は 積極策を捨て、退守に徹するべき 時です。

投資・拡張・新規事業は不可。

きれいに一歩引いておくと後で有利になります。

◆ 恋愛

恋愛は まとまりにくい 時です。

相手に欠点があるというより、

性分や価値観が合いにくい ため、

進展を期待すると気持ちが疲弊する傾向があります。

また、

五爻は“円満に距離を置く”象が強いため、

  • 別れ話は穏やかに進む
  • 関係を整理するとむしろ気持ちが楽になる
  • 無理に続けるよりも一歩下がる方が吉

という形になります。

決して悪縁ではありませんが、

積極的に結びつくべき時ではなく、

互いに本来の道へ戻っていく時期 と言えます。

◆ 天山遯(五爻)が教えてくれる生き方

五爻の教えは、

「最も美しい退き際を知れ」 ということです。

退く時に、

・潔さ

・明るさ

・無理のなさ

・周囲への配慮

が伴えば、人はさらに尊ばれます。

遯は敗北ではなく、

未来を守るための選択。

五爻はこう語っています。

「退くことを恐れるな。

退くことを恥じるな。

正しい心で退くとき、

その退き際こそ嘉(よ)し。」

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