周易64卦384爻占断
191、雷風恒(らいふうこう)5爻
◇ 恒とは何か?
雷風恒(らいふうこう)は、「節度を守りながら続けること」「中庸の継続」を教える卦です。
雷(震)は外で動き、風(巽)は内で従い、やわらかく染み入ります。
恒とは固定ではなく、
揺れながらも折れずに続ける力 のこと。
ただ長く続けるだけではなく、
その中身が正しく、柔らかく、無理がない――
そうした「質の高い継続」を求めるのが恒の道なのです。
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◆ 卦全体が教えてくれること
恒の卦は、継続の吉凶を
「位置」「態度」「柔剛」「変通」
などのバランスで判断します。
五爻は外卦巽の中にあり、
柔中を得て恒に最も適した位置。
しかし君位である五爻が柔順一途に過ぎれば、
“君としての変通力を欠く” ことにもなります。
恒において大切なのは、
続けることと、変えるべき時を弁えること。
五爻はその難しさを象徴する爻です。
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◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「其の徳を恒にす。貞くするは、婦人は吉、夫子は凶。」
【象伝】
「婦人貞吉は一に従いて終るなり。夫子は義を制す。婦に従ふは凶なり。」
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● 解釈
五爻は陰(柔)でありながら君位にいるため、
柔中を得て恒に最もふさわしい徳 をもっています。
そのため、人倫で言えば
“婦人が一人の夫に従って終生を守る”
ように、柔順であることが長く続く基礎となり、吉に至ります。
しかし、夫子(男子/為政者)の場合は違います。
•君位にあって柔順一途
•変通するべき時にも動かない
•自らの義・責務を果たしきれない
こうなると恒の徳を欠き、凶となるのです。
象伝の
「婦人は一に従いて終るなり」
は“従順の徳がそのまま吉になる”ことを示し、
「夫子は義を制す。婦に従ふは凶」
は“君が柔順のみに偏ると本務を失い凶となる”
という深い戒めです。
ここでの「貞(かたく)」は、
“正しいことに固執する”という意味が強く、
柔にして過度に固くなりすぎれば凶――
これが五爻の要点です。
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◆ 含まれる教え
•柔順は場合によって吉にも凶にもなる
•“続ける”と“変えるべき時を知る”ことの両立が重要
•君として柔一途なら本分を失い凶
•穏やかであるがゆえの衰退もある
•恒の徳は、柔中のまま固執しない姿勢に宿る
五爻は、柔順の美徳と柔順の弱点 の両面を示す爻です。
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◆ 仕事
仕事では、
現状維持はできても発展が難しい時。
•今まで通りなら平穏は保てる
•しかし徐々に衰退していく
•積極策は遅すぎて失敗しやすい
•勇断すべき時に動けない
•無難に見えて実は停滞が積み重なる
特に男子の場合、
“必要な変通をしない”ことで凶を招きやすいため、
一度立ち止まって内側を整える必要があります。
事業拡大・方向転換は 不可。
今は静かに守り、基礎を見直す時です。
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◆ 恋愛
恋愛においては、
女性は吉・男性は凶 の象が強く表れます。
● 女性(婦人)の場合
•柔順さが良い方向に働く
•相手に素直に寄り添う姿勢が関係を安定させる
•無理をせず自然体でいれば吉
● 男性(夫子)の場合
•気持ちが弱くなりやすい
•相手に主導権を握られる
•結果として不満や停滞が生まれる
•関係の主導を取れず凶の象に向かいやすい
既に交際している場合は、
男性側が受動的すぎると関係が歪みやすいため注意が必要です。
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◆ 雷風恒(五爻)が教えてくれる生き方
五爻はこう教えています。
「柔順は美徳であるが、固執すれば弱点にもなる。」
恒は続ける徳ですが、
続けるには変えるべき時を知る智慧も必要です。
五爻の柔中は恒にふさわしいものの、
その柔が固まりすぎれば、
やがて衰退・停滞という影が忍び寄ります。
今は無理に動くより、
内を整え、弱さを見つめ、
続けるべきことを精査する時間。
女性には吉、男性には慎重さ。
それが五爻の示す恒の道なのです。

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