周易64卦384爻占断
187、雷風恒(らいふうこう)初爻
◇ 恒とは何か?
雷風恒(らいふうこう)は「長く続くこと」「持続・安定・変わらぬ道」を象徴する卦です。
恒とは、ただ固定することではなく、
正しい道を守りながら、節度をもって継続していく姿 を意味します。
雷(震)の動きと、風(巽)の従順が重なり、
外は動き、内は慎み深さを保つことで、
初めて「変わらぬ道」が生まれます。
しかし、恒はただ固めれば良いわけではありません。
固くしすぎれば折れ、柔らかすぎれば続かない。
中正を守り、節度を保つことこそ恒の道。
それがこの卦が教える大切な指針です。
◆ 卦全体が教えてくれること
恒の卦は、
「長く続けようと焦ると、かえって続かない」
という逆説を示します。
物事を継続するには、
初めから急ぎすぎず、
力みすぎず、
時を見て少しずつ積み重ねてこそ、安定した恒となる。
恒の卦は言います。
「急いて恒を求めるな。
自然に根を張るのを待つことが恒の道である。」
◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「恒(つね)を浚(ふか)くす。貞凶。利(よろ)ろしき攸(ところ)なし。」
【象伝】
「恒を浚くするの凶は、始めに求むること深きなり。」
● 解釈
初爻は内卦巽の主爻であり、
巽の「入り込む・従順・伏す」という性質が最も強く現れる位置です。
そのため、
まだ始まったばかりなのに、恒(つね)=継続の完成を深く求めすぎる
という象が生まれます。
象伝が
「始めに求むること深きなり」
と評するのは、
序盤から“完璧な恒常性”を求めるために、却って道が歪むという警告です。
さらに、この爻は
- 陰が陽位に居すわり(不正)
- 応の4爻は陽が陰位にいて(これも不正)
男女の位が互いに乱れている形です。
そのため、
そもそも「恒」を求める秩序や関係性が整っていない。
そこへ最初から深く求めれば、凶が生じる。
それを
「貞凶」
=そのまま貞固に押し通すと凶
と言っています。
◆ 含まれる教え
- 物事の初めに「完璧」を求めると、むしろ長続きしない
- 深追いしすぎ、急ぎすぎは恒を壊す
- 始まりには「始まりの歩み方」がある
- 恒常性は、ゆっくり根を張ることによって初めて成立する
◆ 仕事
仕事運では、
意気込みが強すぎて、かえって空回りする時 に当たります。
- 計画が深すぎる
- 理想が高すぎる
- スタートダッシュが速すぎる
- 相手や環境が追いついてこない
このような“過剰な初動”が破綻を生む傾向があります。
現在の方針がすでに誤っている場合も多く、
利益よりも損失が先に立ちやすい。
最善策は
今は保守へ転じ、歩みを緩めること。
新規の計画は見込み違いとなりやすく失敗します。
◆ 恋愛
恋愛では、
相手に求めるものが早すぎる・深すぎる
そんな象が強く出ます。
- まだ始まって間もないのに関係を急ぎすぎる
- 相手に過剰に期待する
- “こうあるべき”を押しつける
- 気持ちが重くなり相手が離れる
こうした “初めから深く求める” あり方が凶を招くのです。
ただし恋愛そのものの縁は否定されていません。
むしろ、
急がず、ゆっくり育てる姿勢
これがあれば凶を避けられます。
焦りは禁物。
長く続けたいなら、最初こそ軽やかに。
◆ 雷風恒(初爻)が教えてくれる生き方
恒の初めにおいて、
求める心が深すぎれば、必ず道を誤る――
これが初爻の強い戒めです。
初爻はこう教えています。
「まだ始まりなのだから、
深く追うな。重く求めるな。
恒は焦った者の手には決して宿らない。」
急がず、押しつけず、
軽やかに歩みを始めることで、
恒の道は自然に整っていきます。
始まりの“浅さ”こそ、
恒を育てる大事な土壌なのです。


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