周易64卦384爻占断
180、離為火(りいか)上爻
◇ 離とは何か?
離為火(りいか)は「明るさ」「文明」「付着」を示す卦で、
光によって万物を照らし、知によって物事を明らかにする働きを象徴しています。
ただし火は揺らぎやすく、他に付いてこそ燃える性質を持ちます。
そのため離の本質は
明を保つ慎みと節度、
そして 他との調和によって力を発揮する在り方 にあるといえます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
光は明るく見えても、不安定なものです。
風に揺らげば影は大きく揺れ、
人の心もまたその光に合わせて変わりやすくなります。
離が教えているのは、
「光を使いこなすには、心を定めなければならない」
という基本姿勢です。
焦って光を乱せば道を誤り、
弱って光を曇らせれば迷いが生まれます。
明を正しく使うためには、
落ち着いた判断と静かな気持ちが欠かせません。
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◆ 上爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「王(おう)用(もち)いて出て征(せい)す。嘉あり。首を折る。獲るは其の醜に匪ず。咎なし。」
【象伝】
「王用いて出でて征するは、以て邦を正すなり。」
■ 解釈
上爻は、離為火における 火勢が最も強烈に達した位置 にあります。
火が頂点に達すると、
それは時に「照らす光」として働き、
また時に「悪を焼く力」として働きます。
ここでいう「王」は五爻であり、
「公」はこの上爻に相当します。
王(五爻)が、公(上爻)を用いて出征させ、
天下の害を取り除かせる――
これが爻辞の「王用いて出て征す」の意味です。
上爻は剛健であり、
強い明をもって一気に敵の中枢を討つ力を持ちます。
ただしその征伐は、
首(=上に立つ者)を正すに止め、
下々の小人を害するような行為には及びません。
つまり目的は
人を殺すことではなく、世を正すこと。
離の明をもって秩序を照らし出し、
必要な改革を行うのが、この爻の象徴するところです。
象伝の
「邦を正すなり」
はまさに、
明をもって正道を示し、天下を正しく治める
という意味に他なりません。
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◆ 含まれる教え
- 強烈な明は、正しい目的のために使われるべき
- 悪しきを除くには断固とした行動が必要なときがある
- しかし小者をいたずらに責めるのではなく、根を正すことが重要
- 強硬策は必要だが、度を越すと明がかえって禍となる
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◆ 仕事
この爻を得た時の仕事運は、
突破の力が必要で、またそれが得られる時期 にあります。
これまで慎重策を続けてきても道が開けず、
どうしても強く出なければならない局面が訪れているという意味になります。
- 交渉は強気で臨んで吉
- 大胆な判断が成功につながる
- ただし、勝ったあとに細かいことにこだわると失敗する
強硬策はうまくいくのですが、
本来の目的を忘れて周囲を圧してしまうと、
一気に運が傾きます。
「首だけを折り、醜には及ばず」
とは、
的を外さず、本当に必要な一点だけを正すべし
という教えでもあります。
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◆ 恋愛・婚姻
婚姻は、やや凶寄りの微妙な時期です。
努力すればまとまるものの、良縁とは言いにくく、
特に
- 相手が目上すぎる
- 力関係が不均衡
- 何かと気を遣わされ、心が安まらない
といった傾向が出やすいです。
無理に進めるより、
いったん時を置いて判断し直すほうが賢明と言えます。
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◆ 離為火(上爻)が教えてくれる生き方
離為火の最終段は、
「明を強く使わなければならない時が来る」
という極めて象徴的な境地です。
ただしその光は、
乱暴に振るえば相手を焼き、
慎重に用いれば世を明るく照らします。
この爻が教えてくれるのは、
- 勇気ある決断
- 本質だけを正す強さ
- 過度の攻撃を慎む節度
- 真に必要な行動だけを選び取る冷静さ
つまり、
「明を生かすための最後のバランス」
です。
強い行動力が求められますが、
それは破壊のためではなく、
正すため、未来を切り開くための力。
離為火・上爻は
明の極みに立つ者にふさわしい、
大いなる責任と智慧を示しているのです。

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