周易64卦384爻占断
170、坎為水(かんいすい)2爻
◇ 坎とは何か?
坎為水(かんいすい)は、「水」の象であり、危険・困難・試練を意味します。
上下ともに坎(水)で重なり、「重坎(じゅうかん)」となる卦は、危険が二重に迫る状態です。
しかし、この卦は単なる災厄を告げるものではなく、困難を通じて真の信念を試される時を示します。
水は流れても決して形を失わず、どんな障害にも順応してその道を探す。
坎の卦は、その「順応と粘り強さ」によって危険を渡る道を教えてくれます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
坎は「険中に道を求める」卦です。
人生における試練の時であり、危険の只中にありながらも、正しい心を守る者は小さな光明を得るということを伝えています。
安易な道を探せば溺れ、恐れに負ければ沈む。
しかし、恐れを受け入れ、努力を重ねていくならば、必ず脱出の道が開かれるのです。
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◆ 二爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「坎(かん)に険(けん)有(あ)り。求(もと)めて小(すこ)しく得(う)。」
【象伝】
「求(もと)めて小(すこ)しく得(う)るは、未(いま)だ中(ちゅう)を出(い)でざるなり。」
解釈:
第二爻は坎の内卦の主爻であり、重坎の中心に位置します。
すなわち「危険の中の危険」にありながらも、剛中の徳をもって己を保ち、かすかに光を見出す位置です。
「坎に険あり」とは、状況が厳しく容易に進めないこと。
しかし、「求めて少しく得」とあるように、全く絶望ではなく、小さな成果や希望を得る余地があることを示しています。
象伝の「未だ中を出でざるなり」とは、まだ危険の真っただ中にあり、抜け出すまでには時間がかかることを意味します。
つまりこの爻は、努力が報われるまでの過程にあり、成果は小さいながらも、確実な前進がある時なのです。
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◆ 含まれる教え
- 苦難の中でも信念を失わないこと。
- 小さな成果に満足し、大望を焦らぬこと。
- 忍耐と誠実が、困難を乗り越える唯一の道。
- 危機の最中こそ、静かに力を養う時である。
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◆ 仕事
この爻を得た時は、長い試練の途中にある時期です。
努力しても結果が出ず、報われないと感じることが多いでしょう。
しかし、それは決して無駄ではありません。
いまは「百の努力に対して十の成果」といった状態。
焦って環境を変えたり、職を離れたりすると、せっかくの努力が水泡に帰します。
耐えているうちに、思わぬ引き立てや抜擢が訪れる兆しがあります。
小さな成功を積み重ねながら、時機を待つことが大切です。
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◆ 恋愛
婚姻・恋愛は停滞の時です。
相手との歩調が合わず、思うように進展しない。
または、当方の譲歩や努力が報われない場合もあります。
「求めて少しく得る」とあるように、わずかな希望はありますが、すぐに結果を求めてはなりません。
焦れば誤解やすれ違いを招き、かえって遠ざかります。
誠意を持って相手を理解し、時の熟するのを静かに待つことが吉です。
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◆ 坎為水(二爻)が教えてくれる生き方
この爻が示すのは、「苦境の中にも微かな希望を見出す心」です。
水は岩をも穿つといわれます。
たとえ一滴でも、信念をもって流れ続ければ、いつか道を拓く。
深い坎(穴)にあっても、心が折れぬかぎり、希望の光は失われません。
成果は小さくとも、その一歩が未来を支える礎になる。
焦らず、怯まず、静かに流れる水のごとく――
それが、この爻の教える生き方なのです。

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