160、山雷頤(さんらいい)4爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

160、山雷頤(さんらいい)4爻

◇ 頤とは何か?

山雷頤(さんらいい)は「養う」「育む」を意味します。

上卦は山(艮)で止まり、下卦は雷(震)で動く。

静と動が内外に備わり、人は何を摂り入れ、何を拒むべきか、その「養いの正道」を示しています。

頤(おとがい)は口を象り、単に飲食ではなく、心・徳・人間関係を正しく養うことの大切さを教えます。

◆ 卦全体が教えてくれること

頤の卦は「正しく養い、正しく養われること」を本義とします。

自分の力や地位を誤用して他を支配するのではなく、

徳に基づく養いを施し、その恩恵を広く分かつことが理想です。

また、養われる側も、欲や便宜に流されず、正しい主を仰ぐことが求められます。

頤の真髄は、「養う者と養われる者の調和」にあります。

◆ 四爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「顛(さかさま)に頤(やしな)う。吉。虎視眈眈(こしたんたん)、其の欲(よく)遂遂(ちくちく)。咎无し」

【象伝】

「顛に頤うの吉は、上の施し光(おお)いなるなり」

解釈:

四爻は上卦(艮)の初位であり、君側に仕える側近の位置にあります。

本来、上に仕え養いを受ける立場ですが、この爻は下の初爻(陽正)と正応しており、

上ではなく下に「養いの資」を求める――つまり「顛(さかさま)に頤う」姿勢を取ります。

一見すると、上下の秩序を逆転させるようですが、

初爻が剛正の賢人であるため、その人物から教えを受け、これを民に施すことは、

むしろ為政者として最も賢明な態度とされます。

上の者が下の賢を求めてこれを用いる、これを「顛に頤う」と称し、

その結果「吉」となるのです。

「虎視眈眈(こしたんたん)」とは、鋭い洞察をもって機会をうかがう意。

「其の欲遂遂(ちくちく)」とは、強い意志をもって目的を遂げること。

つまり、この爻は注意深く情勢を見極め、的確な時機に行動することで吉を得ることを教えています。

象伝の「上の施し光(おお)いなるなり」とは、

上位にある者が、下位の賢人を尊び、その知徳を施政に生かすことで、

恩沢が広く世に及ぶという意味です。

◆ 含まれる教え

  • 下の賢を尊び、正しい知を取り入れることが真の徳治。
  • 表面の上下関係にとらわれず、実質に即して人を用いよ。
  • 虎視眈眈――静観と洞察が成功を導く。
  • 欲を遂ぐるも、節度を保てば咎なし。

◆ 仕事

この爻を得た時の仕事運は、通達・改善・再生の兆しを意味します。

これまで停滞していた案件や計画に、ようやく光が見えはじめる時期。

ただし、強引に動くのではなく、部下や後輩(初爻の象)を信頼し、任せることが成功の鍵です。

新しい事業や交渉を直接自分で進めるよりも、

信頼できる人に任せて見守る方が良い結果を得ます。

慎重に時を観察し、機を逃さぬよう行動すれば、

小さな利益から次第に大きな成果へと育っていくでしょう。

◆ 恋愛

婚姻・恋愛においては、難局の打開・停滞の解消を示します。

これまで誤解や障害が多かった関係でも、ここで誠意をもって臨めば円満にまとまる時。

ただし、強引に主導しようとせず、相手の立場や意見を尊重する姿勢が大切です。

長く続いてきた誤解やわだかまりを、対話によってゆっくり解く――

そのような誠実さが、頤・四爻の「吉」を引き寄せます。

◆ 山雷頤(四爻)が教えてくれる生き方

この爻が教えるのは、「賢を求め、徳を施すこと」こそ真の養いであるという道です。

上にあっても驕らず、下の才を敬い、その力を世のために活かす。

それが「顛に頤う」の真意であり、為政者・指導者のあるべき姿です。

虎視眈眈と機を窺い、遂遂として志を貫く――

しかしその眼は、常に人を育て、人を活かす方に向けられている。

そこに、頤の卦の「養いの完成」があるのです。

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