周易64卦384爻占断
158、山雷頤(さんらいい)2爻
◇ 頤とは何か?
山雷頤(さんらいい)は、「養う」「育む」を意味します。
上卦は山(艮)で止まり、下卦は雷(震)で動く。動静の調和のもと、人は何を口に入れ(受け入れ)、何を拒むべきかという「養いの道」を正す卦です。
頤(おとがい)は口を象り、単なる飲食に限らず、精神・徳・学びまで含めた総体的な「養い」を指します。
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◆ 卦全体が教えてくれること
頤の要諦は「正しく養い、正しく養われる」こと。
自分に適したものを摂り、分に合わぬものを求めない。
養いは内面の徳に根ざすべきで、見栄や妄念に基づく摂取は身を損なう――これが頤の教えです。
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◆ 二爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「顛(さかしま)に頤(やしな)う。経(つね)に拂(もと)る。丘において頤(やしな)う。征(ゆ)けば凶」
【象伝】
「征けば凶とは、行きて類を失うなり」
解釈:
「顛に頤う」とは、養い方があべこべ(逆立ち)になっていること。
二爻は陰で力弱く、柔中の位にあり、自身だけでは養いを得にくい位置です。本来は**応位である五爻(君位)**に拠って正しく養いを得るのが道ですが、五爻も陰で資(たす)けを与えにくい。
そのため、身近な比爻の初爻(位低し)や、応でも比でもない上爻へと見当違いの依存を起こしやすい。
こうして「経(つね)に拂(もと)る(常道に背く)」状態となり、「丘において頤う(高処を仰ぎ見て口実を求める)」ゆえに、進めば(征けば)凶だと戒めます。
象伝の「行きて類を失う」とは、二爻が本来寄るべき同類(柔中)にして資を与えるべき五爻を捨て、分にそぐわぬ上爻などへ走るため、正しき帰趨(きす)と人倫を逸することを言います。
要するに、分に応じた筋目の養いを外し、安直な援助や権勢へと寄ろうとするのが最大の凶因です。
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◆ 含まれる教え
- 分に応じた正しい筋(応位)から養いを得よ。 便宜・権勢に走るのは凶。
- 見当違いの依存は常道を外す。 近道や口利きに頼れば、かえって根を失う。
- 「進めば凶」――性急を戒め、位に即して是正せよ。
- 養いは人倫の秩序に拠る。 正しい関係性を外せば、徳も事も損なう。
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◆ 仕事
この爻を得た時、仕事運は自力での一本立ちが難しく、頼り先も誤りやすい時。
身近な部下・後輩(初爻)に無理をさせたり、縁の薄い有力者(上爻)に縋ったりするのは禁物です。
正規のルート・正当な上席(五爻)に則り、手続きを踏んで支援を求めること。
紹介・口利き・迂回策で動くと、後々の信用失墜・しがらみの増大を招きます。
交渉・提携・資金調達などの新規は見合わせが吉。
方針は、現行の業務を粛々と整え、筋の通った改善を積むことにあります。
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◆ 恋愛
恋愛・婚姻では、動機が倒錯しやすい象。
持参金・地位・体裁など外的条件を優先し、相応しき相手を外して不縁に走る傾向があります。
「顛に頤う」ゆえ、夫唱婦随を欠き、力関係が逆転して疲弊する恐れも。
親族・近親からの諫めを軽んじ、権勢に与(くみ)すれば、人間関係の断絶を招きやすい時。
この期は拙速に事を運ばず、品性・素行・価値観の整合を見極めるのが肝要です。
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◆ 山雷頤(二爻)が教えてくれる生き方
頤の道は、「誰から何をどう受け取るか」の秩序を正すことにあります。
分を忘れて近道に走れば、徳も縁も失う。
二爻は、正しい筋目(応位)に還れと教えます。
進んで凶ならば、止まって正せばよい。
自らの位と関係性を整え、常道に復して養いを得る――
それが、頤・二爻の要諦です。

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