周易64卦384爻占断
154、山天大畜(さんてんたいちく)4爻
◇ 大畜とは何か?
山天大畜(さんてんたいちく)は、「大いに畜(たくわ)える」ことを意味します。
上卦は山(艮)、下卦は天(乾)。天が内で動こうとするのを、山が上から静かに止める象です。
これは、外へと動く力を抑え、内に徳・知・力を養う姿であり、
「止まる」ことによって大成する蓄えの時を表しています。
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◆ 卦全体が教えてくれること
大畜は、力や知恵を発揮するよりもまず、育て・蓄えることを重視せよという教えです。
外に動けば散り、内に養えば満ちる。
強い意志を抑えて静かに時を待つことが、将来の繁栄と安泰をもたらします。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「童牛(どうぎゅう)の牿(こく)。元吉。」
【象伝】
「六四(りくし)元吉は、喜(よろこ)び有(あ)るなり。」
解釈:
四爻は外卦艮の初めに位置し、内の三陽(初・二・三爻)を止めて力を養わせる側にあります。
その中でも最も制しやすいのは初爻であり、まだ若く柔順な位置にあるからです。
「童牛の牿」とは、子牛の角に木をあてがう意。
子牛は角が生え始める頃、痒みを覚えてあちこちに頭を擦りつけ、
未熟な角を傷つけやすい。
それを防ぐために、角の根に木を縛りつけて保護する――これが「牿(こく)」です。
つまりこの爻は、未熟な力を無理に動かさず、優しく導いて育てる象。
強制や抑圧ではなく、自然の成長を守るような柔らかな制御を示しています。
この慎み深く、的確な止め方こそ、大畜の「艮止(がんし)」の最上策であり、「元吉」とされる理由です。
象伝が「喜び有るなり」と言うのは、
無理をせず、理にかなった方法で成長を導くため、関わる者すべてに和があり、喜びが生じるからです。
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◆ 含まれる教え
- 柔らかく止める智恵。 抑えつけるのではなく、守ることで力を養う。
 - 未熟な者・事を導く時期。 若い芽を折らず、環境を整えることが肝要。
 - 剛をもって柔を制さず、柔をもって剛を制す。 穏やかな制御が最も強い。
 - 育ての徳をもって成功を呼ぶ。
 
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◆ 仕事
この爻を得た時、仕事運は「調整と育成の時」。
部下や後輩を導く立場にある場合、強制ではなく、
保護と助言によって成長を助ける姿勢が吉を呼びます。
事業は和気藹々とした雰囲気の中で進展し、
無理なく順調に拡張していく兆しがあります。
ただし、初期段階では油断大敵。
子牛の角が柔らかいように、始まりの時ほど慎重な扱いが必要です。
交渉もまた、柔らかい態度・聞き上手な姿勢で臨むと円満にまとまります。
こちらが強く出ると相手が警戒し、思わぬ争いを招くおそれがあります。
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◆ 恋愛
婚姻は陰陽が調和し、良縁の象です。
特に女性が柔順で素直な場合、順調に運ばれます。
相手が多少わがままに見えても、それは純粋ゆえの未熟さ。
こちらが包み込み、優しく導くことで自然と良い関係へと育ちます。
ただし、急がず、相手の成長を待つ余裕を持つこと。
焦れば角を折り、穏やかに守れば「元吉」となります。
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◆ 山天大畜(四爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えるのは、「導きと保護の智」です。
未熟なものを育てるには、力で押さえつけるのではなく、
優しさと観察によって守り導くことが肝要。
「童牛の牿」は、角が生える前に備える智恵。
つまり、問題が起こる前に予防し、芽を折らずに支える姿勢を象徴しています。
柔らかな導きの中にこそ、本当の強さがある。
この爻は、そうした「養う力」「守る愛」をもってこそ、
人も事も大成に向かうのだと教えています。
  
  
  
  
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