周易64卦384爻占断
148、天雷无妄(てんらいむもう)4爻
◇ 无妄とは何か?
天雷无妄(てんらいむもう)は、「妄(みだ)りなきこと」すなわち、
私心を離れ、天の理に従って生きる純粋なあり方を象徴します。
上卦は「天(乾)」、下卦は「雷(震)」であり、
天の意(乾)が雷(震)の動きを導く象です。
すなわち、天命に従って正しく行動することが无妄の道です。
「无妄」とは、作為を離れ、正しく自然の道に任せること。
しかし、もし人が軽挙妄動し、分を越えて行動すれば、
天の理に反し、思いがけぬ禍を招くことになります。
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◆ 卦全体が教えてくれること
无妄の卦は、「正直・無為自然の徳」を示します。
人は、純粋な心をもって正しい道に従う限り、天はこれを助けます。
しかし、そこに少しでも不正や過剛・過柔があれば、天の理にそぐわず、
思いがけぬ障害を受けることとなります。
ゆえに、この卦の教えは、
「己の分を守り、正しい心で静かに時を待て」という戒めです。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「貞(てい)にす可(べ)し。咎(とが)无(な)し。」
【象伝】
「貞(てい)にす可(べ)し、咎(とが)无(な)しとは、固(かた)く之(これ)を有するなり。」
解釈:
四爻は陽爻であり、位置も外卦の初めにあたるため、
本来の无妄の道(無為自然)を踏み外しやすい地点にあります。
そのため、過剛にして妄りに動く恐れがある。
そこで爻辞は、「貞にす可し」と戒めるのです。
「貞」とは、正しきを守る意。
「固く之を有す」と象伝が説くように、
この時は、妄動せず、己の分を堅く守ることが何より大切です。
无妄の道は「正に匪(あら)ざれば无妄に非ず」と言われるほど、
わずかな不正も妄(もう)とみなされます。
したがって、たとえ誠意があっても、時を誤り、分を越える行動は災いとなるのです。
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◆ 含まれる教え
- 无妄の時にあっては、分を守り、正しきを固く保つことが肝要である。
 - 妄動は小さくとも、天理から見れば大きな過ちとなる。
 - 人事の上で不正に関われば、たとえ善意でも咎を免れない。
 - したがって、この時期は慎みと静守をもって過ごすのが最も賢明である。
 
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◆ 仕事
この爻を得た時、仕事運は抑制と守りの時期です。
思いがけない災難や、他人の失策の尻拭いをさせられる可能性があります。
自分には関係のない事柄が重荷となってのしかかる象です。
また、無理な新規事業・拡張は凶。
地位や勢いを頼み、妄(もう)りに進めば、思わぬ反発や損失を招くでしょう。
むしろ、現状を維持し、信義を守ることが吉。
焦って動かず、時が熟すのを待つべきです。
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◆ 恋愛
恋愛・婚姻の面では、誘惑や口車に注意すべき時です。
特に相手が巧みに近づいてくる場合、
その場の感情に流されると後で痛手を受けることになります。
「貞にす可し」とあるように、誠実さと慎重さを守ることが肝要です。
現状維持に徹し、軽々しく心を動かさないこと。
たとえ一時の寂しさや誘惑があっても、
自分の信念を守ることで、やがて誠の縁を引き寄せます。
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◆ 天雷无妄(第四爻)が教えてくれる生き方
この爻が示すのは、「正しさを固く守る勇気」です。
无妄の道とは、ただ正直であるだけでなく、
外からの誘惑や混乱の中でも、その正しさを崩さぬ強さを要します。
「固く之を有するなり」とあるように、
自分の信念を静かに守り、他人や時勢に流されぬこと。
これが、无妄の真の姿です。
動かず、争わず、誠をもって己を律するとき、
天はその静かな徳を見て、災いを遠ざけてくれます。
無妄の第四爻――
それは、“守る”ことこそが最大の勇気であり、最大の知恵であると教えているのです。
  
  
  
  

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