145、天雷无妄(てんらいむもう)初爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

145、天雷无妄(てんらいむもう)初爻

◇ 无妄とは何か?

天雷无妄(てんらいむもう)は「妄(みだ)りなし」、すなわち偽りや作為を離れ、自然に任せることを意味します。

天(乾)の上に雷(震)があり、天の意志(自然法則)に雷の動きが従う象です。

人の側においては、私欲を去り、天の理に従って生きること。

思い上がりや打算を離れ、自然に発する誠をもって行動することの尊さを説きます。

◆ 卦全体が教えてくれること

无妄の卦は、「思い込みや企みを離れ、純なる心に立ち返れ」という教えです。

天道に従えば順調に進むが、もし私意を交えれば、天の理に反して災い(眚)を招くと告げます。

したがって、意図的に動こうとせず、自ずから発する正直・誠実・素直さこそが吉を生む要です。

◆ 初爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「无妄(むもう)にして往(ゆ)けば吉(きち)。」

【象伝】

「无妄(むもう)の往(ゆ)くは、志(こころざし)を得(え)るなり。」

解釈:

初爻は陽爻で陽位にあり、正しくその位に応じた節度を保っています。

无妄の卦において最も清浄な位置にあり、

天の道に順い、妄りな行動をせず、自然の成り行きに従って歩む姿を示します。

「无妄にして往けば吉」とは、

己の打算や策略を去り、心に妄念なく行うならば、天の助けにより吉を得るということです。

象伝の「志を得るなり」は、

人間本来の純粋な志――天性の願いが自然に達せられることを指します。

すなわち、理にかなった行いは、何の作為もなくして実を結ぶという意味です。

この爻は、无妄の徳そのものを体現しており、

己の功を誇らず、自然と調和することで、結果的に最も安定した成果を得ることを教えます。

◆ 含まれる教え

  • 無理に動かず、自然の流れに身を任せることで吉を得る。
  • 策略・計算・私欲を交えず、誠実と静謐の心を保つこと。
  • 他人を操ろうとせず、ただ天の時と人の和を信じる。
  • 自然に発する志こそ、真に「天意と合う」ものである。

◆ 仕事

この時期は、作為を排し、自然に従うことが成功の鍵です。

自分の思惑や策略で動くよりも、流れに任せておく方が良い結果を得られます。

部下や上司のために誠意をもって尽くすとき、その心が通じ、思いが実ります。

一方で、利益を狙ったり、打算的な行動を取れば失敗します。

「天の時を読む」ことを大切にし、あえて動かない勇気を持つべき時です。

◆ 恋愛

婚姻・恋愛に関してはやや不安定で、焦って進めると破綻の恐れがあります。

相手の気持ちを自分の思うように操ろうとせず、自然に任せることが肝要です。

時期尚早の縁談は、家出や誤解などのトラブルにつながりやすいでしょう。

ただし、誠実に相手を思い、見返りを求めずに行動すれば、

ゆるやかに信頼が育ち、後に良縁となる兆しがあります。

◆ 天雷无妄(初爻)が教えてくれる生き方

この爻が教えるのは、「自然に発する誠こそ、真の力である」という生き方です。

人は往々にして、結果を求めて策を弄し、心を曇らせます。

しかし天の理に順うとは、結果よりも正しき姿勢を保つこと。

无妄の初爻は、まさにその始まりの位置にあり、

「ただ正しく、ただ誠実に在ること」が、最大の吉を招くと告げます。

動かずして通じ、求めずして得る。

それが、天雷无妄の初爻が示す——

天意と一体となる、自然で誠実な生き方なのです。

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