133、山地剥(さんちはく)初爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

133、山地剥(さんちはく)初爻

◇ 剝とは何か?

山地剝(さんちはく)は「削られる」「崩れる」「失われる」という意味を持つ卦です。

山の下に地があり、下から山を削り取るような形を示しています。

この象は、上に立つ者が下から蝕まれていく、衰退の極みにある時を表しています。

剝の卦は、積み上げてきたものが少しずつ崩れていく過程を示し、

その進行は静かでありながら確実で、油断すれば基盤を失う危険を孕みます。

そのため、剝の時には新たに築くよりも、守り・慎み・退避を主眼とするのが賢明です。

◆ 卦全体が教えてくれること

剝の卦が伝えているのは、「勢いが下から崩れる時、上にあるものは危うい」という警戒の教えです。

この時は力を誇るよりも、柔らかく身を低くして災を避けるべきであり、

大きな行動や新規の計画はすべて凶を招きます。

つまり、今は進む時ではなく、静かに退いて守る時。

見えない足元の崩れに気づくことが、剝の難を防ぐ唯一の道なのです。

◆ 初爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「牀(しょう)を剝(おと)すに足(あし)を以(もっ)てす。貞(てい)を蔑(ほろ)ぼす。凶(きょう)。」

【象伝】

「牀(しょう)を剝(おと)すに足(あし)を以(もっ)てするは、以(もっ)て下(しも)を滅するなり。」

解釈:

「牀(しょう)」とは寝台、すなわち人の安息の場所を指します。

人が安らかに眠れるのは心身が安定しているからであり、剝の卦ではこの寝台全体を人生の基盤にたとえています。

「牀を剝すに足をもってす」とは、寝台の足を切り取って倒そうとする行為です。

すなわち、上に安らかに横たわっている君子(上爻)を、下から崩して転覆させようとする象。

これはまさに「足元がぐらつく」危うさであり、物事の根本が損なわれ始めていることを意味します。

この段階では、まだ直接的な危害は及んでいません。

しかし陰の力(不正や混乱)はすでに下から浸食を始めており、

正しき道(貞)を失えば、やがて全体が崩れ去るのは時間の問題です。

したがって、この爻は「凶」とされます。

象伝の「以て下を滅するなり」は、

下位の者(初爻)が上を覆そうとする危険な兆しを警告しています。

この爻を得た時は、何よりも足元への警戒が必要です。

◆ 含まれる教え

  • 足元の危うさに早く気づき、直ちに防ぐことが最優先である。
  • 陰の勢いが増しており、表面的な安定に惑わされてはいけない。
  • 下から崩れる時、上の者ほど謙虚さと慎重さを保つ必要がある。
  • 小さな異変を見逃さず、速やかに対策を講じることが命を救う。

◆ 仕事

この爻を得た時、仕事運・事業運はきわめて不安定です。

足元から揺らぎ始めており、これまで築いた基盤が崩れかけています。

思いがけない裏切り、仲間割れ、金銭面での損失などが起こる可能性が高いでしょう。

今から新しいことを始めるのは凶。

むしろ、これまでの計画を即座に停止・撤退することが安全です。

油断すれば騙されたり、他人の策略に巻き込まれる恐れがあります。

交渉や契約ごとは弱みにつけ込まれやすく、正面からの対抗は避けて退くのが良策です。

損して得を取るというより、今は「損を最小限に抑える」ことを目標にすべき時です。

◆ 恋愛

恋愛運もまた不安定で、足元をすくわれる関係を暗示します。

相手を信じすぎると裏切りや欺きに遭う恐れがあります。

また、調査不足や衝動的な行動によって、軽率な相手と関係を持ち、後悔することもあります。

婚姻に関しては、血気にはやって進めると凶。

相手の素性や状況をよく調べ、慎重を期すべき時です。

華やかに見える縁ほど危険が潜みます。

焦らず、時を待つことが最善の策です。

◆ 山地剝(初爻)が教えてくれる生き方

この爻が教えるのは、「危うさは足元から始まる」という人生の真理です。

人は往々にして外敵に警戒しながら、自らの基盤の緩みには鈍感になりがちです。

しかし、崩壊は常に内側から始まります。

「牀を剝すに足をもってす」とは、見えない場所での崩れ――

信頼のほころび、慢心、放置してきた問題が、ついに根を断つ時を示しています。

一刻の油断も許されず、今すぐ態勢を立て直すことが肝要です。

飾り立てず、身を低くし、守りを固めること。

それが剝の時を無事に乗り越える唯一の道です。

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