周易64卦384爻占断
131、山火賁(さんかひ)5爻
◇ 賁とは何か?
山火賁(さんかひ)は「飾る」「装う」ことを意味し、外見や体裁に注意を向ける場面を象徴します。ただし、ここで言う「飾り」とは単なる虚飾ではなく、内実を伴った美しさをどう表現していくかということが問われる卦です。
本卦は内卦に「火(離)」、外卦に「山(艮)」をもち、火が山を照らすように、内なる明徳が外に表れて他を照らすこと、つまり内実を備えた飾りのあり方を教えています。
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◆ 卦全体が教えてくれること
賁の卦が伝えているのは、外見を整えることが大切な時であるという教えです。しかし、それは中身を伴わない虚飾ではいけません。真の賁とは、内実が充実してこそ表面が映えるというものであり、過度な見栄や無理な演出は災いを招く可能性があります。
全体を通して、自然な美しさ、節度を守った表現、内面の誠実さが最も重要であるという価値観が一貫しています。
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◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「丘園(きゅうえん)を賁(かざ)る。束帛戔戔(そくはくせんせん)。吝(りん)なれども終(つい)に吉(きち)。」
【象伝】
「六五(りくご)之吉(きち)は喜(よろこ)び有(あ)るなり。」
解釈:
「束帛戔戔(そくはくせんせん)」とは、謝礼や神へのお供えが乏しいこと、または少なめであることを意味します。
五爻は賁の卦の君位にあり、最も高貴で中心的な位置に立つ爻です。
この爻は、天より賜ったものを育み、自然の恵みをもって天下を飾るという王者の徳を示しています。
すなわち、人の俗情や外面的な華やかさをもって飾るのではなく、内なる誠実と慎みをもって飾る姿勢です。
そのために一時的には吝嗇(けち)と誤解されることもありますが、これはむしろ本当の王道であり、やがては「終に吉」、真の喜びを得ることになります。
象伝の「喜び有るなり」は、表面的な華美ではなく、内実に根ざした清らかな喜びがあることを示しています。
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◆ 含まれる教え
- 無駄を省き、質素に行動することが吉をもたらす。
- 外面的な華やかさより、内面の誠実さが大切である。
- 一時的に地味でも、誠実な努力は後に喜びとして実を結ぶ。
- 自然の恵みを尊び、飾らずにあるがままの美を大切にする。
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◆ 仕事
この爻を得た時は、何よりも無駄を省き、質素なやり方を貫くことが大切です。
今は物事を大げさに進めると損をしやすく、堅実さと控えめさが吉を呼びます。
事業や交渉では、外面的な演出を排し、誠実さを第一にすべきです。
報酬や成果は少ないように見えても、その努力は後に実を結び、やがて確かな喜びへとつながります。
談判や契約では、権謀術数を用いず、正面から誠意をもって臨めば吉です。
見返りを急がず、長期的な信用を積む姿勢を持つことが重要です。
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◆ 恋愛
恋愛面では、華やかな出会いよりも身近な人との絆が良縁となる時です。
派手な言動や外面的な飾りを避け、素朴で自然体の態度で接することが大切です。
贈り物や形式にこだわるより、心のこもった言葉や態度が信頼を深めます。
交際中の人は、倹約や節度を保ち、相手に無理をさせない配慮が吉をもたらします。
また、新しい縁を求める場合も、身近で信頼できる人の紹介など、地に足のついた出会いに福があります。
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◆ 山火賁(五爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えてくれるのは、「質素こそ真の飾り」という生き方です。
華やかに見えるものがすべて価値あるとは限らず、むしろ控えめで誠実な姿こそが、最終的に人々の信頼を集め、深い喜びをもたらします。
「丘園を賁る」とは、自然の美しさをそのまま尊び、天の恵みを飾ること。
見せびらかすためではなく、感謝と誠意をもって生きる姿勢を指します。
「束帛戔戔」——すなわち少なくとも真心を尽くすこと。
飾らぬ中にこそ真の美があり、慎みの中にこそ喜びが宿る。
それが、王者の賁道(ひのみち)であり、あなたが歩むべき品格ある道なのです。
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