周易64卦384爻占断
129、山火賁(さんかひ)3爻
◇ 賁とは何か?
山火賁(さんかひ)は「飾る」「装う」ことを意味し、外見や体裁に注意を向ける場面を象徴します。ただし、ここで言う「飾り」とは単なる虚飾ではなく、内実を伴った美しさをどう表現していくかということが問われる卦です。
本卦は内卦に「火(離)」、外卦に「山(艮)」をもち、火が山を照らすように、内なる明徳が外に表れて他を照らすこと、つまり内実を備えた飾りのあり方を教えています。
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◆ 卦全体が教えてくれること
賁の卦が伝えているのは、外見を整えることが大切な時であるという教えです。しかし、それは中身を伴わない虚飾ではいけません。真の賁とは、内実が充実してこそ表面が映えるというものであり、過度な見栄や無理な演出は災いを招く可能性があります。
全体を通して、自然な美しさ、節度を守った表現、内面の誠実さが最も重要であるという価値観が一貫しています。
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◆ 三爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「賁如(ひじょ)。濡如(じゅじょ)。永貞にして吉。」
【象伝】
「永貞の吉は、終にこれを陵(しの)ぐ莫(な)きなり。」
解釈:
賁の三爻は内卦の終わりに位置し、賁の道における内面の飾りの極点ともいえる場所にいます。ここでの「賁如(ひじょ)」は装いが盛んな様子、「濡如(じゅじょ)」は潤いのある艶やかな様子を表しています。すなわち、この爻は賁の中でもっとも華やかな表現が現れる場であることを意味します。
しかし、その華やかさをただ肯定するだけではなく、「永貞」—永く正しきを守ることが大切であると強調されます。つまり、どれほど美しく着飾ったとしても、それが正しき本分に基づいていなければならないのです。
象伝では、「終にこれを凌ぐ莫し(これを超えるものはない)」とまで言い切っています。これは、外面の装いと内面の正しさが調和したとき、それ以上に美しいものはないという賛辞でもあります。
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◆ 含まれる教え
- 華やかに飾ることができる時であるが、その裏に正しき道を守る心構えが必要である。
- 内面の誠実さが外見に現れて初めて「真の美」となる。
- 虚飾に流れることなく、自らの本分を見極めること。
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◆ 仕事
この時期のあなたは能力や魅力が周囲に際立って映る時ですが、油断すると中身のない演出になってしまう危険性があります。プレゼンテーションや面接、提案など「見せ方」が問われる場面での成功運は高いですが、基礎を固めずに見かけだけを追うと後で信頼を失うことにもなりかねません。
また、物の本当の姿がはっきりしないという事がまず言えます。例えば商品なども粉飾が多くて中身がはっきりしないとか、人を雇う時などにしても、その人は口もなかなか達者だし、やることもテキパキしているので良いようにも思えるのだが、新しく採用することは良くないと見ます。
旧事を守ってゆくのに吉の占です。これまで障害のあったことも、ここで新しい道を見出してやってゆくよりも従来努力して来たことをもう一押ししてゆく方が好結果を得られるでしょう。
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◆ 恋愛
恋愛においては、見た目や印象に惹かれて関係が進みやすい時期です。外見が華やかな相手、振る舞いが魅力的な相手と出会うかもしれませんが、相手の本質や価値観に目を向けることが重要です。
また、自分自身が見た目や行動でよく見せようとしすぎるあまり、本心が伝わらなくなるおそれもあるので注意が必要です。正直で誠実な態度が、最終的にはもっとも大切な魅力になるでしょう。
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◆ 山火賁(三爻)が教えてくれる生き方
この爻が教えてくれるのは、美しさや体裁を意識すること自体は決して悪くないということです。ただし、それが正しき信念や誠実な行動の上に成り立っていることが条件です。
「賁如・濡如」のように輝く装いの時だからこそ、道を踏み外さず「永貞」—永く正しきを守る心をもって生きることが、最終的に人として最も美しく尊ばれる在り方だと教えてくれます。
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