周易64卦384爻占断
127、山火賁(さんかひ)初爻
◇ 賁とは何か?
山火賁(さんかひ)は「飾る」「装う」を意味する卦です。ただしそれは虚飾や見せかけではなく、本質を生かした美しさ、内面からにじみ出る品格、自然の流れにかなう装いを意味します。賁のときは、外見だけに頼らず、内にある誠実さや徳を調えてこそ、真に美しい姿として評価されます。
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◆ 卦全体が教えてくれること
賁卦は、「飾り立てることの是非と程度」を問う教えです。本来の姿を隠して見せかけを整えるのではなく、自然な姿に調和した賁りこそが吉に通じます。飾るとは、他人に見せるものですが、その背後には自分の心や態度の誠実さがなくてはなりません。
また、過度の装いはかえって破綻を招くため、控えめで実直な姿勢を守ることが大切だと告げています。
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◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「其の趾(あし)を賁(かざ)る。車を舍(す)て徒(かち)す。」
【象伝】
「車を舎(す)て徒(かち)するは、義乗らざるなり。」
解釈
初爻は賁の「飾ること」の出発点です。最下位にあるこの爻が飾るのは、身体の最も地に近い部分──「趾(あし)」、すなわち足です。そこに現れる賁りは、華美ではなく、慎ましやかな自然の美しさを示しています。
「車を舍て徒す」とは、車に乗る資格や財力があっても、それに頼らず、自分の足で歩むことを選ぶという意味です。これは「飾りすぎず、等身大の自分を受け入れる態度」を象徴しており、虚飾よりも誠実な歩みの方がよいという教えです。
象伝にある「義乗らざるなり」とは、「正しい義があるからこそ、あえて車に乗らず、地道な道を行く」という君子の姿勢を称えています。
このように、初爻の賁りは極めて素朴で本質的。実直さこそが、最も美しい賁りであると教えているのです。
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◆ 含まれる教え
- 飾りは「内実」が伴ってこそ意味がある。
- 地味であっても誠実な姿が、人の信頼を得る。
- 見栄や虚飾を避け、自分の足でしっかりと歩むべき。
- 義ある行動は、立派な装いよりも尊ばれる。
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◆ 仕事
仕事では「控えめな姿勢」が評価される時です。見た目や肩書きではなく、行動や誠意で信頼を得ましょう。大きなプロジェクトや表舞台に出るよりも、地道な業務や裏方的な役割に注力する方が成果につながります。過剰な自己主張は逆効果。素の自分で勝負をすることが運気を開きます。
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◆ 恋愛
恋愛では、取り繕わずに「ありのままの自分」で接することが大切な時です。着飾ったり、気を引こうと無理をしたりせず、誠実な言葉と態度で接しましょう。相手に対して見せる飾りではなく、「誠意」や「信頼」を賁りとして伝えるべきです。控えめな振る舞いの中にこそ、本当の魅力が光ります。
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◆ 山火賁(初爻)が教えてくれる生き方
この爻は、「自然な美しさ、素朴な姿勢が最も尊い」と教えています。たとえ装う手段(車)があっても、それに乗らず、自らの足で進む勇気と慎みが、真の徳となるのです。
社会の期待や人目を意識しすぎず、ありのままの自分を整え、歩むこと。それが結果として最も調和的で、長続きする成功を生みます。
無理に飾らず、過剰に引っ張られず、「車を舍てて徒す」──この潔さと誠実さが、賁の時における最善の姿です。
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