周易64卦384爻占断
118、風地観(ふうちかん)4爻
◇ 観とは何か?
風地観(ふうちかん)は「観察」「省察」「模範」を意味する卦です。上に風(巽)、下に地(坤)を配し、風が大地の上を吹き渡るように、上に立つ者の徳や行いが広く世に行き渡る様子を表します。観とは、ただ見ることではなく、深く洞察して学び、正しい判断をもって導くことを示します。
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◆ 卦全体が教えてくれること
観の卦は、君主や指導者がその姿をもって民を導く道を説きます。人々はその徳を観て心を正すので、上に立つ者ほど清廉でなければなりません。また、物事を観る時は、形だけでなく本質を見抜く目を養うことが重要です。観察の深さと柔軟さが、安定した治世や円満な人間関係を築く鍵となります。
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◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
「國の光を観る。用て王に賓たるに利ろし。」
【象伝】
「國の光を観るは、賓(ひん)を尚(たっと)ぶなり。」
解釈
観の四爻は、観の道が成熟しつつある段階を示します。「國の光を観る」とは、国家や社会の風俗・道徳・秩序などを観察し、その光(治まり具合)を見極めることです。観の四爻は外卦(巽)に入り、上から下を観察する立場にあるため、リーダーや高位者として、下々の実情をよく見聞きし、道を正す責務を負っています。
陰爻が陰位にあり「正」を得ているため、過剰な野心や偏りがなく、公正で穏やかな観察ができます。そのため、下位の者をよく導き、不正を正して秩序を守ることができる人物像です。このような者は、王(五爻)から見れば信頼に足る臣であり、「王に賓たるに利ろし」、すなわち高く評価され、賓客のように敬われる存在となります。象伝の「賓を尚ぶ」とは、こうした人物が国家の光を体現するからこそ、上位者がその徳を尊ぶという意味です。
この爻を得た時は、社会的な評価を受け、地位や待遇が上がる好運期に当たります。上司や目上からの厚い信頼を得たり、交渉・商談・取引などで歓待を受けたりすることもあります。ただし、華やかな評価の陰で、内実が追いつかない場合もあり、見栄や過信は禁物です。自分の見聞を深め、冷静に状況を観察することが成功を持続させる鍵となります。
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◆ 含まれる教え
- 外見に惑わされず、国や人の「光と影」をともに観ること。
- 公平な立場で物事を判断し、情に流されないこと。
- 名誉や地位を得たとしても、謙虚に振る舞うこと。
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◆ 仕事
仕事面では、上司や組織から高く評価され、重要な役割を任される時期です。外交・営業・交渉など、人との関わりを通じて成果を上げられます。周囲からの好待遇に甘えず、真摯に現場を観察し、実務のバランスを取ることが肝心です。軽率な判断や表面的な成果に満足すると、内部の問題を見逃して後に損失を招く恐れがあります。
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◆ 恋愛
恋愛においては、華やかで注目を集めやすい時期です。魅力的な出会いや注目される恋の兆しがありますが、外見や表面的な印象に左右されやすく、内実を見誤ることもあります。相手を深く観察し、誠実さと内面の調和を見極めることが大切です。また、周囲の評価を気にしすぎず、静かに信頼を育てる恋が良縁となります。
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◆ 風地観(四爻)が教えてくれる生き方
この爻は「國の光を観る」、すなわち社会や人の善悪を見抜き、正しい道へと導くことの重要性を示しています。華やかな立場にあっても、決して驕らず、慎み深くあるべき時です。表面の光だけでなく、陰の部分にも目を向け、そこにある課題を見抜く力を養うことが真の「観」です。
外から見て整っているように見えることも、内実が伴わなければやがて崩れます。観の四爻は、名誉の裏にある責任を教え、「賓として尊ばれるほどの徳を備えよ」と語っているのです。
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