114、地沢臨(ちたくりん)上爻占断

周易64卦384爻占断

周易64卦384爻占断

114、地沢臨(ちたくりん)上爻

◇ 臨とは何か?

地沢臨(ちたくりん)は、人が人に臨み、上が下に臨むことで秩序と繁栄をもたらす卦です。臨には「近づく」「導く」という意味があり、勢いが盛んに進展する時を示します。ただし、臨む姿勢が浅薄であれば過ちを招き、誠実で厚みのある態度で臨むと吉を得ます。

◆ 卦全体が教えてくれること

臨は「正しい姿勢で人を導き、また感応し合うこと」が大切であることを教えています。勢いが盛んに働く時ほど、謙虚さと中庸を保つ必要があります。小さな驕りや甘さがあると大きな失敗につながりますが、厚く、誠実に臨めば時が味方します。

◆ 上爻の爻辞と解釈

【爻辞】

「敦臨(とんりん)。吉。咎なし。」

【象伝】

「敦臨の吉は、志内に在るなり。」

解釈

上爻は臨の終わりにあたり、臨み方の極点に位置しています。「敦臨」とは、篤く厚い心で臨むことを意味します。三爻と応の関係にありますが、正応ではなく直接的な助けを得られるわけではありません。しかし、三爻のように軽率で甘い臨み方ではなく、外卦坤の極にあり、慎重さと誠実さをもって臨むため「吉、咎なし」となるのです。

象伝が「志内に在るなり」と言うのは、この爻が外見的には臨の中心から離れていても、心の中に篤い志を抱き続けているからこそ「敦臨」となるのだと説いています。実際、臨の中心(五爻)を離れていても、初爻や二爻に強く臨む姿勢を失ってはいません。陰位に陰爻で正を得ているため、過ちを犯さず慎重に臨むことができます。

この爻を得たときの現実的な姿は、世俗の醜悪さに嫌気がさし、郷里に退いてしまうような時です。「皆して勝手にやってくれ」と投げ出す気分になり、交渉ごとも埒が明かずに途中で打ち切るなど、うんざりする状況に置かれがちです。それが良いか悪いかは別として、自然の勢いとしてそうなっていきます。しかし、志を失わず、内面に厚い誠実さを保つことで、最終的に咎を免れます。

また、これは外に向けて積極的に行動するよりも、内を整えるべき時です。体調管理や生活習慣の見直しなど、内面的な充実に努めることが「敦臨」のあり方です。

◆ 含まれる教え

  • 臨みの終わりには、外に向けて拡張するよりも、内面を深めて慎重に歩むべきである。
  • 厚く誠実に臨むことが「敦臨」であり、それが咎を免れる鍵となる。
  • 投げ出したい気持ちになっても、内なる志を保つことが大切である。

◆ 仕事

仕事では、表立って行動するよりも、内省と準備に徹するべき時です。交渉は進展しにくく、打ち切りや中断となることもありますが、それを無理に押し進めると不利を招きます。むしろ一度立ち止まり、状況を見直すことで後に有利な展開が得られます。また、人から敬遠されるような場面もありますが、それを気にせず志を貫くことで後に評価されます。

◆ 恋愛

恋愛では、外的な刺激や進展を求める時期ではなく、心の厚みを養うことが必要です。相手との関係において、無理に進めようとすれば誤解や倦怠感を招きます。むしろ一度距離を取り、お互いの心を深め合うことが良縁につながります。投げやりにならず、誠実に相手を思い続ける姿勢が「敦臨」の吉を呼びます。

◆ 地沢臨(上爻)が教えてくれる生き方

上爻は「敦臨」、すなわち厚く慎重に臨む生き方を教えています。外に求めず、内に志を抱いて生きることが、吉をもたらす道です。退くことは敗北ではなく、むしろ成熟の表れです。世俗の醜悪さに振り回されず、内面を整え、時を待つ姿勢こそが、最後に咎を免れ、平穏を得る生き方であると告げています。

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