7月中旬に開かれる全国の伝統神社祭典

神社祭典暦

夏本番の7月中旬、日本各地の神社では古式ゆかしい祭礼が行われます。今回は2025年7月14~20日の間に開催される神社主催の伝統的な祭典から、東日本(北海道)、中部(静岡)、西日本(和歌山)の各地域を代表する3例を紹介します。それぞれ歴史や伝承に彩られた特徴ある行事で、神様の御神徳(ご利益)にも触れながら祭りの魅力をお伝えします。

1、北海道・士別神社例大祭(士別まつり)

  • 神社名:士別神社(北海道士別市) 
  • 祭典名:士別神社例大祭(通称「士別まつり」)
  • 祭典日:2025年7月14日~16日 
  • 御神徳:天照皇大神を祭神とし、農業・畜産・商工振興、交通安全、安産・子育て、厄除け、生業繁栄、開運福徳、健康長寿など生活全般の守護神とされる 。

士別神社は明治時代の屯田兵開村を記念して1899年(明治32年)7月15日に創祀され、その日を例祭日と定めた 。祭典は地元で「士別まつり」と呼ばれ、7月15日の開村記念日にちなみ3日間にわたって行われます 。初日の14日には宵宮祭が行われ、15日は神輿渡御(みこしとぎょ)とともに「つくも太鼓」の演奏が披露されます。16日の後日祭では、前年4月~当年3月に生まれた赤ちゃんを祝う「うぶこまつり」が催されるなど、町をあげて賑わいます 。

祭り期間中は、士別市の桜の名所・九十九山(つくもやま)の麓に鎮座する神社の周辺がにぎわいます。街中には紅白の横断幕や祭礼幟がはためき、ご神灯が立ち並び、露店がずらりと並んで夏祭り一色に染まります 。例年、遠方からも多くの参拝者が訪れ、子ども神輿や市民参加の各種催しで盛り上がります。祭典の起源である明治開基当時から続く伝統行事の一つであり、地元の歴史と信仰を感じられる夏の風物詩です 。

2、静岡・來宮神社例大祭(熱海こがし祭)

  • 神社名:來宮(きのみや)神社(静岡県熱海市) 
  • 祭典名:來宮神社例大祭(通称「熱海こがし祭り」)
  • 祭典日:2025年7月14日~16日 
  • 御神徳:熱海地方の地主神「来宮大明神」として古くから信仰され、来福・縁起をもたらす神とされる 。漁業の守護神としても知られ、禁酒禁煙の守り神とも伝えられる 。

熱海市の來宮神社は、境内の樹齢2100年超の大楠(おおくす)の御神木でも知られる古社です 。毎年7月14日から16日にかけて行われる例大祭は「熱海こがし祭り」と呼ばれ、熱海の繁栄を祈願して盛大に執り行われます 。7月15日には神輿渡御(みこしとぎょ)が行われ、市内の商店街や駅前を練り歩きます。宮司や総代などで構成される行列は総勢500名を超え、参道が時代絵巻のように彩られます 。

最大の見どころは7月16日の「御鳳輦(ごほうれん)浜降り神事」です 。これは熱海サンビーチ海岸で行われる神事で、厄年である42歳の担ぎ手たちが「みょうねん」と声をかけながら御鳳輦を力強く担ぎ上げ、担ぎ手が一気に海中へと飛び込みます 。古来より続く勇壮な神事で、浜辺は見物客と参加者で熱気に包まれます。また祭りの行列には天狗(猿田彦命の化身)が登場し、祭礼の道中で「麦こがし」を撒きます。参拝者がその麦こがしに触れると無病息災になると伝わり、長寿・健康を願う人々に親しまれています 。

3、和歌山・熊野速玉大社 扇立祭

  • 神社名:熊野速玉大社(和歌山県新宮市)
  • 祭典名:扇立祭(おうぎたてまつり)
  • 祭典日:2025年7月14日午後(夕刻) 
  • 御神徳:社伝では祭神・伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と速玉男命を祀り、農業・漁業の守護、交通安全、疾病平癒、豊作祈願の神として信仰される(社殿は熊野三山の一社として古くから尊崇され、秋祭りやお燈祭など多くの行事が無形民俗文化財に指定されている) 。

熊野速玉大社は熊野三山の一つで、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」にも登録された格式高い社です 。例年7月14日の夕刻に行われる「扇立祭」は、熊野詣での古い習わしを今に伝える夏祭です。神前に国宝・檜扇の写しを立てる神事で、夏に疫病が流行しやすいことから病気と害虫を祓い、氏子の健康と五穀豊穣を祈願します 。扇立祭当日は夕方5時半から斎行され、境内では「虫追い式」を伴う農業振興祭も行われて、地元の人々が浴衣姿で参拝に訪れます 。

夏の夜風に包まれた神社には提灯が灯り、参列者は厳かな雰囲気の中で見守ります。平安時代から続く厳かな伝統神事であり、隣接する神倉山の大岩を御神体とする熊野信仰の源流を感じられます 。扇立祭のほか、熊野速玉大社は10月の例大祭「熊野速玉祭・御船祭」や冬の火祭「お燈祭」も重要無形民俗文化財に指定される由緒ある神社です 。

祭典の魅力と締め

以上、東日本(北海道)、中部(静岡)、西日本(和歌山)から、それぞれ歴史や独自の伝統をもつ神社の祭典を紹介しました。士別まつりは開村の歴史を偲ぶ盛大な郷土祭、熱海こがし祭りは熱海の海辺で繰り広げられる壮麗な神輿行事、扇立祭は熊野信仰の伝統を体感する厳かな神事です。いずれも地域に根ざした氏子の信仰心と芸能が息づく行事であり、神様のご利益(豊作・無病息災・厄除けなど)を願う人々に長年愛されてきました。夏の風物詩として伝統的な雰囲気を楽しむと同時に、祭礼に込められた歴史と信仰の深さにも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考資料: 北海道士別市観光サイト 、士別神社公式 、熱海市観光サイト 、来宮神社公式 、熊野速玉大社公式 、JRおでかけガイド など。

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