真勢中州とその一門の占例(19)病人の治療方法、「来客の名前を占う」の占
本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。
【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(19)】
ー真勢中州について
真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。
『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、
「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」
と記されています。
ー真勢中州とその一門の占例
(37)は病人の治療方法、(38)は「来客の名前を占う」の占例です。
(37)は次号に紹介する占例と合わせて「神明の占」と言われている神技です。
(37)ある人、病人の治方を問う。これを筮して家人(かじん)の小畜(しょうちく)に之(ゆく)を得。
占之曰(これをせんしていわく)、巽(そん)を風とし、離(り)を熱とし、坎(かん)を毒とし、痛みとす。
これ、風邪に水毒(すいどく)を兼ねたる症なり。大黄剤(だいおうざい)を用いたらば全快すべしという。中(ちゅう)す。
以上の占(せん)は皆実事(じつじ)の的当(てきとう)する者にして初学(しょがく)占法(せんぽう)の一隅(いちぐう)とすべき者なれば、これに挙げてもって参考に供う。

(38)中州先生壮年の頃、河内(かわち)に遊歴の時一客あって先生に見ゆ。
門人かたわらに在りていわく、来客の名を射(しゃ)すること如何。
先生のいわく、易は不測(ふしぎ)の妙あり。名を射(しゃ)すること難(かたし)とするにあらず。
試みにその名を射(しゃ)せん。門人をして卦(か)を起こさしむ。
節(せつ)の屯(ちゅん)に之(ゆく)を得。
先生占之曰(これをせんしていわく)節は水沢(みずさわ)の在の象にして沢中(たくちゅう)の水は止水(しすい)にして平(へい)なるものなり。
ゆえにこの人の名は首字(しゅじ)平(へい)の字ならん。
また兌(だ)は西方、金(きん)に属して四の数あり。ゆえに次の字は四の字ならん。
また之卦(ゆくか)の震(しん)を長男とす。郎(ろう)は男子の通称なり。
ゆえにその次の字は郎ならん。これに由って観ればこの人の名は平四郎というなるべし。
果たしてその人の名、平四郎(へいしろう)といえり。座中(ざちゅう)驚嘆してその妙を称せり。

※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』
ー真勢中州の占法を知るための参考文献
真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。
○加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。
○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。
○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。
【執筆者】
天元春日(あまもとはるひ)
【Twitter 】「天元春日」で検索してください。
【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。
【著書】
○『年卦八索法 平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle)
《内容》
平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。
本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。
○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle)
《内容》
江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。
【出版物】
○『大島中堂選集』1250円(Kindle)
《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。
周易愛好者必携の書です。
収録書籍
1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』
2、 『易学千里眼』
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)
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