周易64卦384爻占断
79、火天大有(かてんたいゆう)初爻
◇ 火天大有とは何か?
火天大有(かてんたいゆう)は、上卦が離(火)、下卦が乾(天)で成る卦です。乾の三陽が大地の根幹をなし、その上に火が昇って輝く姿は、天と火が呼応して光明に満ち、富や徳が広く行き渡る象です。**「大いに有つ」**とは、物質的な富に限らず、知恵や徳望を大いに備えることを指します。ただし、その富をいかに用いるかによって吉凶が分かれることを示しています。
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◆ 卦全体が教えてくれること
大有の卦は「富み栄えるときにこそ謙虚さを忘れてはならない」と説きます。富や力を独占して驕れば衰退を招きますが、誠をもって人に分かち与えれば福が広がり、さらに徳を積むことができます。つまり、大有の時は繁栄の極みであると同時に、最大の危うさをはらんでいる時でもあるのです。
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◆ 初爻の爻辞と解釈
【爻辞】
害(がい)に交(まじ)わるなし。咎(とが)に匪(あら)ず。艱(なや)めば則ち咎(とが)なし。
【象伝】
大有の初九は、害に交わるなきなり。
解釈
初爻は大有の始まりにあり、富の力がまだ大きく外に及んでいない段階を示します。このため、他人に施すこともなく、また害を与えることもなく、「咎に匪ず」=過ちはないとされています。ただし、これは消極的に「悪くはない」という評価にとどまります。
そこで重要なのは「艱めば則ち咎なし」です。つまり、今は咎がないが、このまま奢りや油断に流されればいつ害を招くかわからない。だからこそ常に憂いを忘れず、自らを省みて慎み深くあれば、最後まで咎を避けられる、という戒めです。
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◆ 含まれる教え
• 富を持っても独占せず、慎み深く使うこと。
• 誘惑や甘言に惑わされやすいときほど、心を堅く守る必要がある。
• 小さな油断や慢心が、やがて大きな過ちを生むことを警告している。
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◆ 仕事
事業や職務では、周囲からの誘いに注意すべき時です。甘い条件や都合のよい話に乗ると、後に大きな損失を招く可能性があります。自分の本分を守り、積極的に拡大するよりも、まずは基盤を固めることが大切です。現状維持と堅実さが最も良い結果をもたらします。
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◆ 恋愛
恋愛では、華やかさや誘惑に惑わされやすい時期です。派手さや一時の感情に流されず、誠実さを大切にすることで関係は安定します。相手を試すようなことや浮ついた行動は破綻の原因となるため、慎重であることが吉です。
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◆ 火天大有(初爻)が教えてくれる生き方
繁栄の始まりには、慎みを忘れないことが何よりも大切です。人は富や力を得るとつい心が緩みますが、そこで油断すれば過ちを犯します。常に「艱めて咎なし」という姿勢、つまり苦労や憂いを忘れず自らを律することが、繁栄を長く続ける鍵となるのです。
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