周易64卦384爻占断
78、天火同人(てんかどうじん)上爻
◇ 天火同人とは何か?
天火同人(てんかどうじん)は、上卦が乾(天)、下卦が離(火)で成ります。火は昇り、天は広がる性質を持ちます。両者がともに上進する象は、人々が志を同じくして大義に向かう姿を示します。ただし、同じくするにも段階があり、時に私情に偏り、時に大同に至るなど、その過程で試練を伴います。
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◆ 卦全体が教えてくれること
同人の卦は「志を同じくすることによって大を成す」ことを説きます。狭い仲間内の和合に留まらず、公正な道に基づいて交わることが求められます。小利や私情にとらわれては道を誤り、誠をもって広く人と交われば道が開ける、という教えです。
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◆ 上爻の爻辞と解釈
【爻辞】
同人郊(こう)においてす。悔(く)いなし。
【象伝】
同人郊(こう)においてするは、志(こころざし)・未(いま)だ得(え)ざるなり。
解釈
上爻は同人の終点にあたり、内から遠く隔たって郊外の位置にあります。そのため、中心から外れて人と同じくすることが困難となります。とはいえ、これは「志を失った」というのではなく、志があってもそれに執着しない、淡泊な境地に至ったことを示します。
象伝に「志、未だ得ざるなり」とあるのは、求める相手と交わることが実際には果たされていないが、それを悔いることもなく、心を安んじている状態を言います。したがって「悔なし」とは、執着を離れ、外にあって平安を得る境地を指すのです。
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◆ 含まれる教え
• 執着を離れることは、時に最大の安らぎを生む。
• 志が叶わなくても、淡泊に受け入れることで悔いは残らない。
• 人と交わる道も、時に退いて独りを保つことが大切。
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◆ 仕事
この時期は新たな挑戦や拡張を避け、これまでの積み重ねを守るのが吉です。外部との大きな交渉や取引はまとまりにくく、徒労に終わる恐れがあります。むしろ、内にこもって既存の事業を丁寧に維持することが成功につながります。積極的に打って出るよりも、慎重に様子を見守りながら力を養うべき時です。
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◆ 恋愛
恋愛においては、相手との間に距離が生じたり、なかなか思うように進展しないことがあります。しかし、それを無理に追い求めず、淡々と受け入れることで悔いを残さずに済みます。一時的な孤独を恐れず、自分自身の心を整えることで、かえって次の良縁を呼び込む準備となります。
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◆ 天火同人(上爻)が教えてくれる生き方
同じ志を持つ人と交わることは人生において大切ですが、時にあえて一歩退き、淡泊に物事を受け入れる姿勢も必要です。求めるものが手に入らなくとも、それを悔やまず、自らの安らぎを大切にすればよい。真に大きな志を持つ者は、執着にとらわれず泰然と構え、時を待つことができるのです。
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