周易64卦384爻占断
23、山水蒙(さんすいもう)5爻
◇ 蒙とは何か?
『蒙(もう)』は、未熟なものが学びを通じて成長していく過程を象徴する卦。
山の中に水が流れ込み、道を探してさまよう様子は、人生の初期段階や学びの途中にある人の姿と重なります。
ここでは「導きを受ける者」と「導く者」との関係性が重要な鍵となります。
◆ 五爻の爻辞と解釈
【爻辞】
童蒙(どうもう)吉。
【象伝】
童蒙の吉は、順にして以って巽(したが)うなり。
「童蒙(どうもう)」とは、素直で従順な学び手のことを指します。
この五爻は蒙の主爻であり、未熟さを残しつつも柔らかい心を持ち、師の教えに対して敬意をもって素直に耳を傾ける姿を表しています。
陰爻でありながら陽位に居るため、「未熟ながらも、正しき姿勢を持っている」という評価が与えられます。
象伝にある「順にして巽(したが)う」とは、秩序に従い、謙虚な心で教えを受け入れることが、最終的に吉をもたらすという意味です。
◆ 含まれる教え
この爻は、「柔順で謙虚な姿勢こそが、学びにおける最良の資質である」ということを教えてくれます。
「童蒙」であるがゆえに、まだ完全な理解には至らないとしても、素直に人の意見に耳を傾け、導きを喜んで受け入れることで、着実に成長していけるのです。
また、変卦が風水渙(ふうすいかん)となることからも、蒙昧がゆっくりと晴れていく、希望に満ちた変化が示唆されています。
◆ 仕事
仕事面では、「学ぶ姿勢が評価され、伸びていけるとき」です。
この時期は、たとえ知識や経験が浅くとも、謙虚に学ぶ意志と、素直に実行しようとする態度が周囲に好印象を与えます。
特に上司や指導者との関係が良好であれば、そのサポートによって力を発揮できるでしょう。
大切なのは、自分の考えやこだわりを先に出さず、いったん受け入れてみる柔軟さです。
その姿勢が、将来の信頼と評価を築く礎になります。
焦らず、じっくりと一つひとつ学びながら進んでいく——それがこのときにふさわしい行動です。
◆ 恋愛
恋愛においては、「相手の気持ちや状況に素直に寄り添える姿勢」が吉をもたらします。
自分の感情を押し通すよりも、相手に歩み寄ることを意識することで、自然と信頼関係が深まります。
特に片想い中の方は、「自分の思いを伝える前に、相手を知ること」に時間をかけることがポイント。
一歩引いた優しさが相手の心に響くときです。
また、この爻には「子どものことで吉」という意味もあるため、家庭運や妊娠・子育てに関する喜びを暗示することもあります。
穏やかな関係の中で、安心感と成長が得られる時期ともいえます。
◆ 山水蒙(五爻)が教えてくれる生き方
五爻は、蒙をひらく鍵が「素直さ」「柔らかさ」「謙虚さ」にあることを示しています。
未熟であることは恥ではなく、学ぶ意志と心がけがあれば、それだけで尊く、希望に満ちた状態なのです。
自分の意見を押し出すのではなく、人の教えをしっかりと受け止め、それをもとに行動することで、人生は自然と拓けていきます。
童のように、清らかで柔らかな心を持つ者にこそ、真の導きが与えられる。
そんな「無垢な賢さ」が、五爻の静かな美しさです。
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