周易64卦384爻占断
22、山水蒙(さんすいもう)4爻
◇ 蒙とは何か?
『蒙(もう)』の卦は、無知から知への旅路を象徴する教えの卦です。
下に「水(坎)」、上に「山(艮)」が重なり、水が山の中に入り込んで行く形は、道を知らず手探りで進もうとする未熟者の姿。
ここでは「導きを求める者」と「導く者(師)」のあり方、そして学ぶ姿勢がいかに重要かを教えてくれます。
◆ 四爻の爻辞と解釈
【爻辞】
蒙に困しむ。吝。
【象伝】
蒙に困しむの吝は、独り実に遠ざかるなり。
四爻は、蒙卦の中でも特に孤立した存在を象徴します。
陰爻であるこの位置は、周囲に応じる陽爻がなく、導き手とのつながりを持てない状態です。
「蒙に困しむ」とは、まさに学ぶ機会を得られず、自らの無知を破ることができずに苦しむ様子を表しています。
「吝(りん)」とは、あきらかな咎ではないものの、情けない・残念な状態を意味します。
そして「独り実に遠ざかる」とは、導いてくれる二爻(師)から精神的にも物理的にも遠く、教えを請う機会に恵まれないことを指します。
◆ 含まれる教え
この爻は、「独りよがりでは蒙は破れない」「真の導きに出会えなければ、進むべき道を見失う」という厳しい教訓を含んでいます。
人生には、自分ひとりではどうにもならない局面があります。
特に未熟であると自覚するならば、正しい師を求め、教えを請い、耳を傾ける姿勢が何より大切です。
しかしこの爻では、そのような導き手と縁がなく、自力で蒙をひらく力も弱いため、悩みと閉塞の中にとどまり続けてしまう状態が示されています。
◆ 仕事
仕事面では、「助けが得られず孤軍奮闘」といった状況に陥りやすい時期。
本来であれば経験者や上司のアドバイスを受けてスムーズに進むべき業務も、誰にも相談できず、自己流で苦戦してしまうかもしれません。
このような時は、「知らないことを知らないままにしておかない」ことが肝心です。
恥を恐れず、学ぶ姿勢を持ち続け、信頼できる人を見つけて助言を求める努力が求められます。
また、自分ひとりで完璧にやろうとするほど空回りしやすいので、無理をせず、一歩引いて周囲を見る視野も必要です。
◆ 恋愛
恋愛では、「相手との距離感」や「心のすれ違い」に悩みが生じやすい時期です。
自分の思いばかりが先行して、相手の気持ちや考えを理解しきれない。あるいは、自分がどう感じているかも上手く伝えられない——そんな歯がゆさが出てきます。
とくに、恋愛経験が浅い場合や、感情に素直になれないとき、この四爻のような「行き詰まり」や「孤立感」が表れやすくなります。
ここで大切なのは、素直に学ぶ姿勢。恋愛もまた「学び」の連続であり、経験を通じて成熟していくものです。
この時期は、焦って進展を求めるよりも、じっくりと人を知り、自分を見つめ直す期間として過ごす方が賢明でしょう。
◆ 山水蒙(四爻)が教えてくれる生き方
この四爻は、「人は誰しも、導きを必要とする時がある」ことを教えています。
人生のある時期には、自分の力だけでは解けない課題や悩みに直面するものです。
そのときこそ、「謙虚に学ぶ心」が救いとなります。
孤立を恐れず、しかし自分を閉ざさず、誠実に導きを求めていくことで、必ずや蒙を抜ける道が見えてくる——それがこの爻の静かな教えです。
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