周易64卦384爻占断
20、山水蒙(さんすいもう)2爻
◇ 蒙とは何か?
『蒙(もう)』は「蒙昧(もうまい)=ものごとの道理をまだ知らぬ状態」を象徴する卦です。
上卦「艮(山)」は止まること・教えることを、下卦「坎(水)」は困難や試練を表し、山が水をせき止めるように、教えが無知に道を示そうとする姿を表しています。
これは「教育と導き」の卦でもあり、若き者の成長に必要な「厳しさ・慈しみ・節度」の在り方を私たちに教えてくれます。
◆ 二爻の爻辞と解釈
【爻辞】
蒙を包ぬ、吉。婦を納る、吉。子、家を克(よく)す。
【象伝】
子、家を克くするは剛柔接(まじわ)ればなり。
この二爻は蒙卦の中でも中心となる存在で、「蒙をひらく師(し)」に相当します。
「蒙を包ぬ」とは、無知なものを包容し、あたたかく受け入れながらも、教えをもって育てていくことです。
ここにおける「婦を納る」は、家を守る妻を迎えることで家が整うように、良き指導者が現れることで集団や関係が秩序を得ることを表しています。
「子、家を克す」は、若者がその家をよく治めることができる、という意味です。これは、剛(陽)と柔(陰)が正しく接し、互いの持ち味を活かし合うことによって秩序と調和が生まれることを示しています。
ただし、時はまだ蒙の時。たとえ吉の兆しが見えていても、慎みを忘れてはなりません。過信することなく、謙虚に導きの役割を果たすべきときです。
◆ 含まれる教え
この爻は、「包容と秩序のバランス」を教えてくれています。
指導者としての力を発揮するにあたり、ただ厳しくするのではなく、相手を受け止める器量と温かさが必要です。
また、理屈だけでは人の心は動きません。教える側の姿勢そのものが、学ぶ者にとっての大きな手本となります。このような徳のある存在に人は自然と集まり、組織や家庭も調和を得て安定してゆくのです。
◆ 仕事
職場においては、あなたが「良き上司・良き指導者」としての役割を担うことを意味します。
部下や後輩の未熟さに対して、叱責だけでなく、まず受け入れること。彼らの話に耳を傾け、理解し、時には自ら手本を示すことで、信頼が生まれ、育成もうまく進みます。
今はまだ混乱や未熟さの中にあっても、あなたの徳と態度が周囲に安心を与え、少しずつ秩序が形づくられていくでしょう。
また、組織やプロジェクトの中核を任されることもあります。真面目さと誠実さが評価され、名実ともに中心的な人物として活躍していける時期です。
◆ 恋愛
恋愛においてこの爻は、「大きく包み、育てていく愛」を表します。
相手がまだ不安定だったり、恋愛経験が浅かったりしても、それを拒絶せず、むしろそれを含みこむような姿勢が吉とされます。
相手の短所や未熟さに目を向けすぎると、関係はギスギスしてしまいます。むしろ「一緒に育っていこう」という意識で接することで、深い信頼と絆が生まれます。
また、あなた自身が今、愛される側というより、導く側に立つべきときかもしれません。包容力が試される時期とも言えます。
時がたつにつれて、関係はより落ち着き、理想的なパートナーシップが築かれていくことでしょう。
◆ 山水蒙(二爻)が教えてくれる生き方
この二爻は、「教え導く者は、まず相手を受け入れ、包みこむ力を持て」と語りかけてきます。
ただの厳しさではなく、そこに温かさと信頼を築く姿勢があってこそ、人は心を開き、成長へと歩み出せるのです。
そして、それは一朝一夕でできることではありません。導く者自身も、日々学びながら、時の移ろいとともにゆっくりと秩序を整えてゆく。その姿勢がまわりの信頼を生み、自然と人が集まり、家(関係や組織)が整っていくのです。
コメント