周易64卦384爻占断
17、水雷屯(すいらいちゅん)5爻
◇ 屯とは何か?
「屯(ちゅん)」は、万物がいまだ定まらず、混沌とした中で生まれ出ようとする状態を表す卦です。
上卦「坎(水)」は困難を、下卦「震(雷)」は動こうとする力を意味し、進もうとする意志と、立ちはだかる障害が交錯する時期を象徴します。
この卦においては、焦らず、状況を見極めながら進むことが求められます。
◆ 五爻の爻辞と解釈
爻辞:その膏(めぐみ)を屯(とどこお)らす。小貞(しょうてい)なれば吉、大貞(だいてい)なれば凶。
象伝:その膏(めぐみ)を屯(とどこお)らすとは、施すこと未だ光いならざるなり。
この五爻は、本来君位にあたる重要な位置です。
しかし、ここでは陰の勢いが強く、その「膏(めぐみ)」=恩恵や支援が行き渡らない状況にあります。
つまり、民を潤す立場にありながら、実際には手立てを施す力を持っていないのです。
このため「小貞なれば吉」、つまり日常の小さな務めを堅実に果たしていれば吉であり、
反対に「大貞なれば凶」、つまり大きな仕事や改革を行おうとすれば失敗を招くという戒めとなっています。
◆ 含まれる教え
この爻は、能力や権限の限界をわきまえ、無理をしないことの重要性を教えてくれます。
たとえ立場が上であっても、状況が整っていなければ理想を貫くことは困難であり、
むしろ堅実な日常の積み重ねこそが最善策であるということです。
◆ 仕事
責任ある立場にある方が、自分の理想や信念を通そうとしても、周囲の協力や資源が伴わなければ、かえって結果がついてこないことがあります。
今は小さな業務や日常業務を誠実にこなすことに専念するのが吉。
大きなプロジェクトや抜本的改革は、時を待つほうが無難でしょう。
◆ 恋愛
この時期は、愛情を注ごうとしても、相手にその思いが届きにくいかもしれません。
心の余裕やタイミングの問題で、相手にとって負担になることもあるのです。
さりげない気配りや、日常的なやさしさを大切にすれば、時間とともに関係は落ち着いていくでしょう。
過度な期待や大きなステップを求めるのは控えるのが賢明です。
◆ 屯卦(五爻)が教えてくれる生き方
物事を進めようとする時、「できること」と「まだできないこと」の境界線を見極める眼差しが何より大切です。
高い志を持つことは尊いことですが、状況が整わなければ、その志も空回りしかねません。
五爻は、分相応の責任と、堅実さの美徳を説いています。
いまある力で、目の前の務めに真摯に取り組むこと――その慎み深さが、やがて困難を越えてゆく土台となるのです。
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