周易64卦384爻占断
14、水雷屯(すいらいちゅん)2爻
◇ 屯とは何か?
「屯(ちゅん)」とは、“はじまりの困難”を表す卦です。
春が来て種が芽を出すとき、大地を押し上げるようにして生まれてくるその瞬間には、大きなエネルギーと同時に大きな困難があります。
そのように、物ごとの始まりには必ず混沌や不安、障害がつきものだという教えです。
『水雷屯』の卦は、上に水(坎)、下に雷(震)。
雷が地中に響き、水がそれを上から押さえるような、激しくもまだ形を成さない状況。
それは、方向性を見失いがちで足元も不安定な状態を象徴しています。
ここでは「性急に動かず、内に意志を定めて、時を待つこと」が大切なのです。
◆ 二爻の爻辞と解釈
爻辞:屯如(ちゅんじょ)、邅如(てんじょ)。馬に乗りて班如(はんじょ)たり。冦(あだ)するに匪(あら)ず、婚媾(こんこう)せんとす。
女子貞にして字せず、十年にしてすなわち字す。
象伝:六二の難は、剛に乗るなり。十年にして乃ち字するは、常に反るなり。
この爻は、柔順で中正な陰爻が、陽である初爻に乗っている状態です。
五爻(君位)とは正しく応じていますが、目の前の初爻(陽)に気を取られてしまい、進むべき道をためらっている姿を表します。
「屯如」「邅如(てんじょ)」とは、前に進みたいけれど困難で足止めされている様子。
「馬に乗りて班如たり」は、意を決して進み出るも、再び引き返す、その迷いを表します。
「冦するに匪ず、婚媾せんとす」とは、相手に敵意があるわけではなく、誠実に結びつこうとしていること。
しかし、「女子貞にして字せず、十年にしてすなわち字す」は、慎み深さゆえに安易に結ばれない。
十年という長い時間を経て、ようやく婚礼が叶う――つまり、時間と節度を持って、真の縁を結ぶことを説いています。
◆ 含まれる教え
この二爻は、「志はあるが、時が整わないため、慎み深く待つ」姿勢の象徴です。
表面的には迷い、動きが鈍く見えるかもしれませんが、内には強い志があり、それを軽々しく行動に移さず、節を守っているのです。
長い時間がかかっても、正しき方向へと進もうとするその慎みが、結果として大きな信頼と実りをもたらす――それがこの爻の教えです。
◆ 仕事
今は、良き上司や理想のポジションとの縁が見えていても、状況が整わず足踏みしているときかもしれません。
周囲から見れば、なぜ動かないのかと誤解されるかもしれませんが、今は動かない勇気を持つときです。
誠実さを失わず、時を見て静かに力を蓄えれば、やがてその誠意が評価され、好機が訪れます。
◆ 恋愛
心惹かれる相手がいるけれど、環境や立場が複雑で、すぐに気持ちを伝えられない――そんな葛藤の中にあるかもしれません。
ですが、焦って動けば、誤解や関係の崩壊につながる恐れも。
「十年にしてすなわち字す」とは、時間をかけてでも誠を尽くすことの大切さを説いています。
急がず、丁寧に相手を理解し、信頼を築くことが求められます。
◆ 屯卦(二爻)が教えてくれる生き方
困難にあるとき、人は焦りや迷いに振り回されやすくなります。
しかし、本当に必要なのは「正しい心を持ち、時を待つ」こと。
二爻は、ただ従順であるのではなく、自らの位置と向かうべき相手を見極め、慎み深く、しかしぶれずに歩もうとする強さを体現しています。
“十年”かかるとしても、それが真に価値ある道ならば、進むことに意味がある。
屯卦の二爻は、そうした「誠実で確かな歩み」を教えてくれます。
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